コロナ危機と米中対立をきっかけに世界経済のブロック化が急ピッチで進んでいる。米国と中国はそれぞれ自国製品の活用を強化しており、日本の輸出産業にとっては大打撃となる可能性がある。経済のブロック化は時代の大きな流れであり、この流れに逆行することは難しい。日本の製造業は米国もしくは中国への直接投資をさらに拡大し、事実上の現地企業として活動しなければ、ブロック経済時代を生き残るのは難しいだろう。(加谷 珪一:経済評論家)
米国の政府調達の75%が米国製品に
化学大手の三菱ケミカルは自動車の塗料などに使用する樹脂原料の工場を米ルイジアナ州に建設する。投資額は1000億円で、新工場は世界最大の製造拠点となる見込み。このほか信越化学工業など多くの企業が米国投資を強化している。
米国は世界最大の消費市場であり、近年、地産地消(消費地の近くに製造拠点を置くことで、地域で生産されたものを地域で消費すること)の流れが強まってきたことから、米国に製造拠点を移す企業が増えている。一連の投資はその一環と捉えることもできるが、実はもっと差し迫った事情がある。それは自国製品の購入を優先するバイ・アメリカン政策の進展である。
トランプ前政権の中国敵視政策をきっかけに、世界経済のブロック化の流れが加速しており、米中両大国において自国製品を優先購入する動きが顕著となっている。つまり、高品質で安価な製品を出荷しても、米中国内で製造された製品でなければ、購入してもらえない可能性が高まっているのだ。
バイデン米大統領は就任すると間もなく、米国の政府調達において自国製品を優先するバイ・アメリカン政策の運用を強化する大統領令に署名した。米国政府が1年間に購入する物品の総額は約6000億ドルと言われるが、バイ・アメリカン政策は、政府調達や政府が財政支援するプロジェクトにおいて米国製品の購入を優先する制度である。