台湾・新竹市で行われた台湾軍の軍事演習(2021年1月19日、写真:AP/アフロ)

(吉田 典史:ジャーナリスト)

 終戦の日が近い。この時期になると情緒的で感覚的な「反戦平和」報道が増える。一方で、戦前、戦中の日本の行いは正しかったと論じるような報道もある。そのどちらに与することなく、平和と安全について事実に基づき、深く思索する識者の声こそ、マスメディアは伝えるべきであろう。これは、現在の国際情勢についても言える。そこで今回は、中国・台湾の軍事専門家である防衛省防衛研究所地域研究部長の門間理良(もんま・りら)氏に、台湾や尖閣諸島(沖縄)の現況と今後についてお話を伺った。

2027年までに「東沙島」奪取の可能性が高い

──門間さんは中国軍(人民解放軍)が台湾の東沙島を狙っていると論文やマスメディアで発表していますね。

門間理良氏(以下、敬称略) 中国軍が東沙島(筆者注:台湾の南西に位置し、台湾が実効支配している島)を奪取する可能性が高まっていることを4年程前から懸念し、指摘してきました。

 中国にとって東沙島は重要な意味を持っています。東西約2800メートル、南北865メートルの大きさで、面積にしてわずか1.74平方キロメートルに過ぎないのですが、地政学的に重要なのです。バシー海峡の西側と台湾海峡の南側に位置しています。中国がこの島を軍事基地化できれば2つの海峡に睨みを利かせられるとともに、平時における南シナ海北東海域のコントロールが容易になります。

台湾が実効支配している南シナ海の「東沙島」の位置