W杯アジア2次予選の北朝鮮対韓国戦は無観客で行われた(写真:AP/アフロ)

 2019年10月15日、北朝鮮の平壌で、2022年サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会のアジア2次予選H組第3戦、韓国対北朝鮮の試合が開催された。試合は無観客、無中継で行われたため、「歴史的な試合が暗黒状態に」「サッカー史上、最も秘密のベールに包まれた試合」「幽霊試合」などと散々な言われようだった。

 2019年2月末に開催された米トランプ前大統領と金正恩朝鮮労働党委員長(当時)によるハノイ首脳会談の決裂後、南北関係の改善に消極的になったためだと見られている。

 ところが、2年近くたった今、当時の“暗黒サッカー”の内情が北朝鮮で明らかになった。北朝鮮はなぜ無観客、無中継の試合を行ったのだろうか。今回の北朝鮮はその顛末について。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮では、朝鮮労働党中央委員会所属の統一戦線部が南北関係を所管している。統一戦線部は日朝関係も主導しており、日本の朝鮮総連も担当している。北朝鮮の代表団が韓国や日本を訪問する際のパスポートは、外務省ではなく統一戦線部から受け取る。対韓・対日関係における統一戦線部の立場は絶対で、スポーツも同様だ。

 スポーツは本来、北朝鮮体育省の所管だが、北朝鮮選手団が韓国で試合したり、韓国選手団が北朝鮮で試合したりする時は、必ず統一戦線部が介入する。2019年の“暗黒サッカー”も統一戦線部が絡んだ事件である。

 試合の3カ月前、北朝鮮体育省が中央党組織指導部の集中検閲(監査)を受けたことに端を発する。