イラスト:近藤慎太郎

 前回(うつ病よりも自殺率が高い厄介な精神疾患とは)は、時にうつ病との判別が困難である「統合失調症」「不安障害」「適応障害」「双極性障害」について解説しました。今回からは、うつ病に戻って、詳しく解説していきます。

 もともとうつ病は、「几帳面で真面目な人がなりやすい」と言われていましたが、現在ではむしろ「性格に関係なく、誰にでも起こりえる」と考えられています。

 誰でも可能性があって患者数も多いうつ病ですが、発症のメカニズムは実はよく分かっていません。

 脳の神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンのバランスが乱れて生じるとされており、治療薬も主にそこをターゲットにして開発されています。しかし、なぜバランスが乱れるのかは不明ですし、バランスを調整する薬を飲めば、短期間でスパッと治るというものでもありません。神経伝達物質以外にも、様々な因子が影響していると考えられています。

 詳しいメカニズムはともかく、うつ病を発症するきっかけは、だいたい以下のように大別されます。

(1)家族や親しい友人、可愛がっていたペットとの死別、離別
(2)仕事、対人関係のストレス
(3)環境の変化(異動、失職はもちろん、結婚や進学、就職、昇進など、一般的には好ましい変化でも発症しうる)
(4)がんや、慢性的な痛みなどを伴う病気の発症

 その他、加齢とともに、緩やかに発症する場合もありますし、「これと言って明らかなきっかけがない」という場合もかなりあります。

 いずれにせよ、うつ病を発症すると、頭や心の処理能力が落ちて、状況を理解・判断し、適切に対応できなくなります。いつもであれば乗り越えられるようなトラブル、ストレスの対応にいちいち失敗してしまうのです