欧州連合(EU)は6月24日から2日間、ブリュッセルで首脳会議(サミット)を開催した。このサミットでEU首脳陣は、新型コロナウイルス対策や経済復興に加えて、トルコやロシアへの対応について協議を行った。その中でも注目されたのが、EU加盟交渉が事実上とん挫して久しいトルコとの将来関係に関する議論である。
5月19日、EUの立法府である欧州議会は執行機関である欧州委員会に対し、トルコが基本的人権などEUの重視する価値観と相容れないことを理由に、トルコとのEU加盟交渉を停止するよう求める報告書を提出していた。こうした中で、フォンデアライエン欧州委員長などEU首脳陣がトルコにどのようなメッセージを発するかに注目が集まった。
まずEU首脳陣は、トルコのシリア難民対応をサポートすべく、30億ユーロ(約4000億円)の義援金を支払うことを決定した。2016年の合意を受けて、トルコはシリア難民がEUに流入することがないよう国境管理を強化している。その合意の期限が迫る中で、EUはトルコに対して追加の支援を行い、難民を引き留めるように要請した形だ。
他方で、トルコが求めていたEUとの関税同盟の強化に関しては、慎重な言い回しに終始した。EUの東地中海諸国、特にギリシャとキプロスとの関係でも、EUは従来通りの方針を変えなかった。トルコ外務省は6月25日に声明を出し、EUサミットでの決定に対する抗議を表明したが、その実は想定の範囲内だったというところだろう。
オーストリアのクルツ首相は報道陣の囲み取材の際に、「トルコの人権情勢は無視できない」が「EUは難民を引き受けてくれる国を支援する必要がある」とし、さらに「難民が今後も近隣諸国で引き留められることを望む」と発言した。クルツ首相の発言は、トルコとの関係をこのままに留めていたいというEU首脳陣の本音そのものだったと言えよう。