クーデターで実権を掌握した軍に抗議するためにミャンマーのヤンゴンで行われたデモ(資料写真、2021年5月6日、写真:AP/アフロ)

 中国のウイグル問題をきっかけに、機関投資家が人権に関する厳しい基準を要求するようになっている。一部では、新しい投資基準は経済活動を阻害するとの指摘も出ているが、現実はまったく逆である。基本的人権に配慮しない企業は低収益となりつつあり、機関投資家は儲からない企業に冷徹に対処しているだけである。新しい投資環境に対応できなければ、企業は資金調達もままならないという時代がやってくるだろう。(加谷 珪一:経済評論家)

割れるウイグル問題への対応

 金融庁と東京証券取引所は、上場企業における企業統治の指針である「コーポレートガバナンス・コード」に人権尊重に関する規定を盛り込む方針を固めた。中国のウイグル問題をきっかけに国際社会における人権意識が高まっており、機関投資家は企業に対して人権を意識した経営を求めるようになっている。日本企業の人権意識が低いと評価された場合、投資資金が引き揚げられてしまうリスクがあるため、企業に対して自発的な対応を促すことが狙いだ。

 ウイグル問題への日本企業の対応は大きく割れている。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、「全ての工場を監視し、問題があれば取引停止している」と前置きした上で、「それ以上は人権問題というより政治問題なのでノーコメント」として言及を避けた。無印良品を展開する良品計画も、監査機関に調査を依頼していると説明したものの、「新疆綿」を使った衣料品の販売を続けるとしている。

 一方、カゴメは新疆ウイグル自治区で生産されたトマト加工品の利用について2021年中にやめる方針を明らかにした。ちなみにファーストリテイリングは、フランスのNGOからから強制労働の恩恵を受けているとして告発される事態となっている。