積立が終了した時点でプラスの運用益を目指す

 今回の相談者のような、50歳代後半の方のiDeCoのポートフォリオ配分とメンテナンスについて考えていきます。
 先ほどお話ししたような株価の「あるかもしれない暴落」に備えて、万一の時も後悔しないよう、「やっておくべきこと」を次回と2回に分けて話していこうと思います。

 今回は、iDeCoを数年間の短期で運用する場合の注意点などを中心にお話しします。
 相談者の現状のポートフォリオ配分とこれまでの損益は、以下のようになっています。

ポートフォリオ配分※バランス型商品の内訳は、国内債券33%・外国債券15%・国内株式31%・外国株式14%・その他短期資産7%

 株式割合を60%と高めに配分して、利益を追求する形です。
 iDeCoの運用資産状況も、運用益が国内株式商品で25%、バランス型商品で12%、元本確保型商品で0%となって、全体損益率が14%と、順調に資産が増えています。しかしながら、もうすぐ積立終了の60歳となるので、この先は短期での運用に移行していきます。

 短期でiDeCoを運用するのは、長期で運用できない分、リスクが多く存在します。最大のリスクは、「積立が終了した時点の運用益がどうなっているのか?」です。
 60歳以降もiDeCoで運用を続ける場合、積立が終了しても「口座管理手数料」は給付開始までかかることになります。運営管理機関にもよりますが、年間3000円前後はかかると思ってください。口座管理手数料は、保有資産の一部が自動的に売却され徴収されますので、積立が終了した時点での運用益が少ないと、ただでさえ少なくなってしまった受給額がさらに減っていきます。60歳までの短期運用はプラスを維持することが大原則となります。

 また、iDeCoは通算加入期間が10年に満たない場合には、受給開始年齢が引き上げられます。相談者は4年を超える程度の積立期間なので、最短で63歳からしか受給できません(別表参照)。2年未満の短い加入期間の方は、受給開始年齢は65歳からになるので、老齢厚生年金の受給開始と同じにすることもできます。
 なお、iDeCoの受給手続きは70歳の誕生日2日前までに行うのが原則となっています。受給開始を70歳にするということは、逆に考えると70歳まで口座管理手数料は取られるものの、60歳以降も10年間運用できるということです。ただし、運用商品のメンテナンスをできるという方にしかお勧めできませんが……。

iDeCoの受給可能年齢(2022年4月まで)

通算加入期間 受給可能年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1カ月以上2年未満 65歳

 どちらにしても、iDeCoは2022年5月から受給開始年齢が75歳まで、加入年齢も65歳未満に引き上げられるので、ますます運用期間の幅が持てることになり、iDeCoの運用商品をメンテナンスする役割が増幅します。
 相談者の方も、せっかく積み上げた運用益も「ほったらかし」をしていると、現状のポートフォリオでは暴落相場が始まってしまえば、60歳までの短期運用の期間が約3年間だとすると、相場によっては14%の利益もどんどんなくなっていきます。暴落が始まって利益がなくなってからでは、メンテナンスも効果は期待できません。ある程度の利益が出て、60歳に近づいてきたら、相場が動く前に、プラスを守るための短期運用に切り替えていくことが大切です。

 短期運用は「決断力と実行力」なくてはできません。後は「過ぎたことをくよくよしない」に限ります。やれることはやっていきましょう。