米アップルは4月20日、音声番組を配信する「アップルポッドキャスト」でサブスクリプション(定額課金)を開始すると明らかにした。
2021年5月から世界170カ国・地域で提供を始める。新番組をいち早く聴けるほか、ボーナスエピソードや番組アーカイブなどの特典があり、広告なしで聴けることも利点だと、ティム・クックCEO(最高経営責任者)は説明した。
料金はクリエーターが設定する。月ごとの課金が標準だが、年額制も設定できるという。クリエーターにはサブスクリプションを提供するために必要なツールを年19.99ドル(約2200円)で提供する。これに合わせてアプリも刷新。「チャンネル」を追加し、新番組や好みのコンテンツを見つけやすくするという。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは、このサブスクリプションについて、アップルのサービス事業強化に向けた施策の一環だと報じている。
アップルは19年春に動画配信やニュース・雑誌配信、ゲーム配信といった定額制デジタルサービスを発表。10億台超に上る自社ハードウエア製品のユーザー基盤を利用し、新たな収益源を確保する戦略を打ち出した。
コロナ禍の影響もあり、20年10~12月期のサービス売上高は前年同期比24%増の157億6100万ドル(約1兆7000億円)となり、過去最高を更新した。全体の売上高は前年同期比21%増の1114億3900万ドル(約12兆400億円)で、四半期として過去最高を更新し、初めて1000億ドルの大台を突破した。
競合スポティファイがアップルを猛追
だが、アップルのライバルも利用者や売り上げを伸ばしている。音楽配信で競合のスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーがポッドキャスト分野でアップルを追い抜く見通しだと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
同紙が引用した米調査会社イーマーケターのデータによると、米国ではスポティファイのポッドキャスト利用者数が21年に2820万人となり、アップルの2800万人を上回る見通し。19年に34%あったアップルのシェアは23.8%に低下するとみている。
アップルがポッドキャストを始めたのはスマートフォン「iPhone」の初代機発売前の2005年だった。当時のアップルはシェアは5~7割。だが、その後スポティファイが企業買収したり、バラク・オバマ元米大統などの著名人と契約したりしてオリジナル番組を強化した。こうした施策が奏功し、同社はこの分野でアップルに次ぐ規模の利用者を抱える企業になった。