iDeCoでは税制優遇の効果を重視
あらためて、今回の相談者について詳しく見ていきましょう。
市の職員として勤めている男性の公務員さんで、年齢53歳、配偶者あり、年収約600万円の方になります。預金は約700万円、住宅ローン残高1000万円ということでした。
私でしたら、毎月iDeCoに1.2万円(公務員の掛金の上限)と、余裕資金を使ってNISAで投資信託などを買い、残りを普通積立預金にします。60歳までiDeCoで積立し、何かあったら途中下車(売却)もできるNISA、そして簡単に下車できる普通積立預金をそれぞれ使い分けるイメージです。
今回提示するiDeCoのポートフォリオはこちらです。
①堅実ポートフォリオ(運用期待値=年1.5%)
元本確保型商品40%、国内株式商品15%、外国株式商品10%、バランス型商品(債券多く含む)35%
②チャレンジポートフォリオ(運用期待値=年4%)
元本確保型商品10%、国内株式商品40%、外国株式商品30%、バランス型商品(債券多く含む)20%
①堅実ポートフォリオは、リスクを小さくしながらも一定の利回りを目指し、資産全体の大きな価格変動を避ける短中期的な運用となります。相談者は現在53歳なので、上限の1.2万円を毎月積み立てると、7年で元本は約100万円となります。運用期待値1.5%の場合、節税効果も合わせると、7年後には約126万円になる計算です。
次に、比較的お金に余裕がある方のための②チャレンジポートフォリオ。7年後には節税分と合わせて約136万円になる計算です。
こちらはリスクの大きい株式の比率が高めなので、大きな価格の変動は避けられません。本来は長期運用のためのポートフォリオになりますので、大きな値下がりを防ぐために、定期的なメンテナンスが必須条件になります。
ここで①と②を見比べてみてください。②は大きなリスクを負ったにもかかわらず、7年後の運用結果の差は10万円くらいしかありません。驚きです。
リスクを考えると、通常は①堅実ポートフォリオで十分かと思います。積立期間が短い方は、iDeCoでは積極的に増やすというより、節税効果を利用する感覚が良いかもしれません。
ところで、今回の相談者は公務員なので、定年時にもらえる退職金をある程度確実なものとして計算でき、老後資金を設計しやすい職種といえます。一方、民間企業のサラリーマンは、退職金をあてにしすぎるわけにはいきません。公務員よりさらに堅実なポートフォリオを勧めたいと思います。
50代のサラリーマンの方は、iDeCoの株式比率を合計10~20%にして運用期待値が1%前後になるように、安定を目指して大きな価格変動を避けるポートフォリオで挑んでいき、所得控除で節税しましょう。