20代・30代のiDeCo

 宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、20代・30代の若い方が初めてiDeCoや資産運用に挑戦するときの心構えや、iDeCoのポートフォリオ(資産配分)について考えていきます。

20歳から月1万円でiDeCoを続ければ2000万円も視野に

【質問】
 社会人2年目に突入する、介護士補助をしている男子です。お金は全くというほど無関心で、貯金もほとんどしていないので、そろそろ少しでも何かしなければと考えていたところ、「君の性格上、強制的に貯める仕組みの方がいい」と、iDeCo(個人型確定拠出年金)のことを聞きました。何も知らないので、iDeCoの心構えと、いい商品の組み合わせを教えてください。

 前回に引き続き、iDeCoの商品の組み合わせに関する質問にお答えしていきます。

 今回の相談者は社会人ほやほやの方で、初めての運用商品ということもあって、今回は最善のポートフォリオというよりは、2通りの案を提示して、選んでいただくことにしました。「ベター」と「ベスト」の2種類のポートフォリオをもとに、リスク(値動き)の許容範囲を決めていきます。

 ところで、投資信託などのリスク商品でお金を運用するのが初めての方は、必ずこう言われます。「小田さんならどうしますか? 小田さんの言う通りにします。どうせ、わからんから任せます」。これは資産運用の第一歩において、非常にまずいことです。厳しい言い方になりますが、投資のリスクから逃げているだけで、責任を私に転嫁できる口実を作ろうとしているだけです。

 私は最低でも「株価、為替、金利」の仕組みと相関関係、たとえば過去30年間の流れはどうだったかを確認して、代表的な投資信託を参考に、値動きのチャートを元に説明することにしています。簡単な説明であっても、運用商品の仕組みを少しでも理解してもらうことで、自身の運用に責任を持つきっかけになりますし、「どれだけお金を増やせるか」という目安として捉えられると思います。特に、過去の値動きがどうだったかは重要で、今後の参考になるはずです。

 20代、30代の男女がこれからiDeCoを始める場合、60歳まで30年、40年と掛金を積み立てていくことになりますので、どんな商品で運用すればいいかを、長期的な目線で描いてもらうことが重要です。「資産運用をする人自身に考えてもらう」。アドバイザーの絶対条件ですね。

 相談者が月1万円をiDeCoに40年間積み立てたとしたら、積立金の元本は480万円となります。仮にこれを複利1%で運用できたとすると、60歳の時点で約590万円。3%だと926万円、夢を見たとして5%とすると、なんと1526万円も貯まっちゃいます。
 運用の利益とは別に、iDeCoでは毎年の掛金が所得控除の対象になります。この節税金還付がトータルで元本の20%、金額にして約100万円となると、60歳時点のお金はうまくいけば1600万円を超えます。iDeCoの期間が延長され、65歳まで掛金を積み立てられるようになれば、「老後の生活資金が2000万円不足する」という問題が解決できる可能性もありますね。

 これこそが、相談者のような若い世代ならではの、「長く時間があることで積み重ねられる、大きな希望と夢」です。こんなに素晴らしいことはありません。私には真似できない若者の特権です。
 あとは、「2000万円を貯めるには年何%の利益を狙うのか」「毎月の積立金額をいくらにするか」を、運用商品と照らし合わせながら決めるだけです。

 iDeCoを始めるときに必要な心構えは、「これは面白いぞ。増えるかも」と、いかに思い込むか。この思い込みが、「やってて良かった」に必ずなると信じています。

年5%の利益を狙えるポートフォリオも検討する

 今回の相談者は、医療・福祉関係に勤めているサラリーマンの方です。
 年齢20歳、独身、年収約250万円の方になります。預金は約30万円、親の自宅同居中で、結婚予定もなし。借金は、自動車を購入したため150万円ほどあるということでしたが、月の返済に影響はないとしています。

 まずは、iDeCoの毎月の積立金をいくらにするか? 働き始めたばかりなので、年収はまだ少なく、資産運用にはあまり多くのお金を回せません。私が相談者の立場でしたら、毎月2万円を運用に回して、そのうちiDeCoに1万円、流動性がある(いつでも売って換金できる)NISA、またはつみたてNISAに5,000円として、これと別に5,000円を普通積立預金などに割り振って、運用をスタートさせます。永久に積立を続けるiDeCo、何かあったら途中下車もできるNISA、そして簡単に下車できる普通積立というように割り切るイメージです。

 次にiDeCoのポートフォリオです。

①ベターポートフォリオ(運用期待値=年3%)
元本確保型商品30%、国内株式商品30%、外国株式商品20%、バランス型商品(債券多く含む)20%

②ベストポートフォリオ(運用期待値=年5%)
元本確保型商品10%、国内株式商品45%、外国株式商品30%、バランス型商品15%

 ①と②の違いは、運用リターンの期待値です。最初の話に戻りますが、20歳から60歳までの40年間、月1万円の積立で、①は運用期待値3%、926万円。②は運用期待値5%、1526万円が貯まるポートフォリオとなっています。両者とも株式に多く配分をしてリスクも高めとなり、利回りを重視するポートフォリオにしています。
 特に②の方は、短期的には元本が大きく減ることもあるかもしれませんが、長期的に運用すれば大きなプラスになることが期待できるので、より若者向けのポートフォリオとも言えます。

 逆に言うと、株式が50%を超えるような配分は、若い世代や投資経験者でないとできないiDeCoのポートフォリオです。若くない人が②のようなポートフォリオを選ぶ場合は、マーケットの動きに合わせたメンテナンスが必要になりますが、若い世代は長期で運用する効果で、メンテナンスをあまり考えなくてすみます。

 若い方は、まだまだ時間を有効に使えます。夢、希望、そして楽しむことを念頭に、初めてのiDeCo、初めての資産運用にチャレンジしてください。

 次回は、40代の方に適したiDeCoのポートフォリオを考えていきます。