本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第2回のテーマは、法定相続人がいない場合の財産の扱いです。
財産はすぐに国に没収されるわけではない
ちょっと寂しい言葉ですが、「生涯未婚率」という言葉をご存じでしょうか? 内閣府が国勢調査を基にして発表するデータの一つなのですが、50歳までに一度も結婚をしたことのない人の割合のことを言います。そしてこの「生涯未婚率」令和2年版の「少子化社会対策白書」によると、2015年時点の生涯未婚率は男性では23.4%、女性は14.1%と、昭和60年(1985年)では男女とも4%前後だったことを考えると決して少なくない割合となっています。
このまま晩婚化、少子化が進めば自ずとおひとりさまも増えていくことがわかりますね。
というわけで、おひとりさまが増えている昨今、自分が亡くなった後の自分の財産はどこに行ってしまうのかを心配される方も増えています。
Q.
私には相続人がいません。
相続人がいない人が亡くなると、財産は国に没収されてしまうと聞きました。
没収されるくらいなら、お世話になった方に差し上げたり、福祉施設に寄付をしたりしたいのですがどうすればいいのでしょうか?
A.
法定相続人がいなくても、「特別縁故者」が財産を受け継ぐ場合もあります。
財産を寄付したい場合は、生前に遺言書を作成する必要があります。
おひとりさまが亡くなったとき、その方に別居中の子供がなく、もちろん配偶者もなく、両親や祖父母も先に他界し、兄弟姉妹もいない場合、たしかに「その財産は国庫に帰属する」という法律があります。しかし、亡くなってすぐそのまま財産の名義が自動的に国に書き換えられてしまうわけではありません。各種手続きのあと、最終的に誰にも相続されなかった財産が国のものになるのです。
おひとりさまが亡くなった場合、一般的には裁判所が選任する「相続財産管理人」がおひとりさまの財産の整理手続きを行うこととなります。
相続財産管理人は、おひとりさまの未払いの債務を相続財産から支払う手続きをしたり、お亡くなりになる前のその方の暮らしを調査して、事実婚である内縁関係の夫や妻、亡くなった方を献身的にお世話した方が「特別縁故人」として裁判所に認められれば、その方に財産を相続させたりします。
法定相続人がいないおひとりさまでも、亡くなったらその財産が必ずしも国に没収されるわけではありません。ただし、「特別縁故人」にあてはまる人がおらず、最終的に誰も財産を受け継ぐ人がいない場合には、それは国のものになります。
財産を寄付するなら、専門家のアドバイスで遺言書を作成
財産を福祉施設やご自分が卒業した学校などに寄付したい場合には、生前元気なうちに遺言書を作成しておかなければなりません。
亡くなったあとで、遺言書に基づいて財産を寄付することを「遺贈寄付」といいます。母校や福祉施設、NPO法人などに遺贈寄付をしたい場合、遺言書にその遺志を書き残しておくことで、財産は国のものになることなく、しかるべき相手に贈ることができます。
遺言書は財産の扱いを決める大切な書面であり、その作成や管理は厳密に行われる必要があるので、遺贈寄付を行う際には、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
どこに相談していいかわからないという方は、下記のサイトが参考になると思います。