入団会見に臨んだ田中将大投手(筆者撮影)

(大西康之:ジャーナリスト)

 マー君が大人になって帰ってきた。東北楽天ゴールデンイーグルスへの入団が決まった田中将大投手が30日、東京都内で記者会見した。投手としての彼の偉業をくどくど説明する必要はないだろう。2013年に楽天イーグルスを初の日本一に導き、7年間、メジャーの名門ニューヨーク・ヤンキースのエースとして活躍したあのマー君である。

 私はスポーツ記者ではないので野球の専門的な話は書けない。しかし野球の本場で7年間の充実の日々を過ごして帰国した32歳の記者会見は、野党議員に「言葉が伝わらない」と批判され「失礼じゃないでしょうか」とムキになった、どこかの首相に見せてあげたいほど堂々としていた。

明瞭簡潔で力強い言葉

 いちいち説明するより、実況中継をお楽しみいただきたい。

 1月30日、都内某所。本来ならテレビ、新聞、雑誌の記者で溢れかえるはずの会見場は、1社一人に制限され、長い机に記者一人のソーシャルディスタンス。それでもあのマー君が帰ってくるとあっては、換気の良い会場でも熱気がこもる。定刻の午後4時30分を数分過ぎたところで、イーグルスの三木谷浩史オーナー兼会長、立花陽三社長、石井一久ゼネラルマネージャー(GM)兼監督、そしてマー君が登壇した。

左から楽天ゴールデンイーグルスの立花陽三球団社長、三木谷浩史オーナー、田中将大投手、石井一久GM兼監督(筆者撮影)、

 三木谷オーナーが「コロナ禍で苦しい中、あえて日本に、楽天に帰ってきてくれた田中投手の男気に感謝する。ノムさん(マー君が入団した時の楽天監督だった故野村克也氏)とセンさん(マー君が開幕から無傷の24連勝で楽天を日本一に導いた時の監督だった故星野仙一氏)が誰よりも喜んでいると思う」と挨拶し、石井GMが「今年は絶対に勝つ」と宣言した後、いよいよマー君が話し始めた。プロンプターも原稿もなく、完全なアドリブである。

「7年前、快くメジャーに送り出してくれ、そして今回、温かく迎えてくれた三木谷会長に感謝します。毎オフ、仙台の設備を『好きに使ってくれ』と言ってくれた立花社長、そして今回『君の力が必要だ』と選手としてありがたい評価をしてくれた石井GMに感謝します。震災から10年の今年、(プロ野球選手になって)10年経ってフリー・エージェント(FA)でチームを選べる立場になり、こういう決断をしました」

 まっすぐに前を向き、簡潔明瞭に力強くマー君は語った。そのスタイルは質疑応答になっても変わらない。