新型コロナウイルス感染者が急増している。当初、菅政権はGoToトラベルは続行すると強く主張していたが、支持率の急落を受けて、突如、キャンペーンの一時停止を決断するなど政策は迷走している。医療関係者の一部からは緊急事態宣言の発動も視野に入れるべきとの声が上がっており、ビジネス界は苦慮している状況だ。
厳しい措置を再度、実施するかどうかは、最終的には政治(国民)の判断だが、経済とコロナ対策のバランスについては、論点をもう一度、整理しておくべきだろう。「経済かコロナか」などと感情的になってお互いを罵っても何も生まれない。(加谷 珪一:経済評論家)
原理原則で考えることが大事
経済とコロナの関係については、各論を言い出し始めるとキリがないので、マクロ経済の原理原則にしたがって考えることが重要である。経済界は基本的に景気を悪化させたくないと考えているが、それは経済界に限った話ではなく、政府も一般国民も、そして医療関係者も皆、同じである。
では景気がよいというのはどういうことなのだろうか。くだらない話に聞こえるかもしれないが、こうした基礎的な事柄を整理することは、非常時においては大きな効果を発揮する。
景気が良いというのは、極めて曖昧な表現であり、こうした曖昧な表現は、具体的な政策を立案する際には使わない方がよい。景気の拡大についてもっと具体的に定義すればGDP(国内総生産)の数字が増えることを意味している。GDPの数字を決める要因は、全国で行われた取引の量と物価の2つだが、物価要因を除けば、GDPは取引量に依存することになる(物価要因を除いた数量ベースのGDPを実質GDPと呼ぶ)。つまり取引量を維持もしくは増やすことができれば、景気後退を防げるとの解釈になる。