安定的な成長軌道に乗った企業の集まり

 1975年の創業以来、2004年までの長きにわたり「配当しない会社」として名を馳せていたのが、かのマイクロソフトです。

 そして、この新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要で、その名をますます世界に響き渡らせているアマゾン・ドット・コムですが、同社も株主に配当金を支払っていません(余談ですが、アマゾンはNYダウの構成銘柄にも採用されていません)。

 これらは株主に配当金を支払わない、すなわち株主に還元しない企業です。しかし配当金を払わずに内部留保を厚くすることで、「M&Aや人材獲得、設備投資を機敏に行えるように原資を確保する」ということです。

 確かに、融資・社債発行・株式発行など外部資金を調達する手間・時間・コストを踏まえると、内部留保を取り崩して資金を調達する方がスムーズですし、よりスピーディでしょう。配当金として投資家に還元するということは、企業の成長に必要な原資を流出させているとも言い換えられるのです。

 配当貴族の構成銘柄は、かつてのマイクロソフトや今のアマゾンのような、大きな飛躍(に伴う株価上昇)は期待できない一方、安定的な成長軌道に乗った企業の集まりと考えられそうです。

まっすぐに延びる線路株主への還元を積極的に行う配当貴族の構成銘柄は、経営の安定性が魅力といえる

為替変動リスクや取引時間に注意

 さて、私たち日本人が配当貴族に投資する上での留意点がいくつかあります。

 私たちは日本円を使って生活していますから、配当貴族に投資するとなれば、「株価変動リスク」に加えて「為替変動リスク」もとることになります。また私たちが夜、休んでいる間、彼の地は昼間であり、取引が行われている点にも留意したいところです。

 なお、配当貴族への投資は公募投資信託(以下、ファンド)とETFのどちらでも可能ですが、ETFの方は1日の出来高が少ないのが気に掛かります。

まとめに代えて

 配当貴族も株式指数、すなわちインデックスの1つです。

 しかし本稿をご覧になられて、配当貴族がインデックスファンドの1つだということをお忘れになられていたとしても、不思議ではありませんね。そもそも配当貴族という響きがインデックスらしくなく、アクティブファンドかと見紛ってしまいます。が、そのパフォーマンスも実はNYダウよりも優れている、まさにフェイクミートみたいなインデックスなのです。