中国・深センの街並み(写真AC)

 中国のシリコンバレーと言われる深セン。なぜ深センでは世界経済を牽引するスタートアップが次々に誕生するのだろうか。キーワードは「プロトタイプ」だ。深センには、頭でっかちに計画を立てるのではなく、とにかく手を動かして試作品を作る人や企業が集う。深センを知り尽くした識者・経営者が、イノベーションを次々に生み出す場「プロトタイプシティ」の全容と成立条件に迫った。日本でプロトタイプシティは生まれるだろうか?(JBpress)

(*)本記事は『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』(高須 正和・高口 康太:編著、澤田 翔・藤岡 淳一・伊藤 亜聖・山形 浩生:著、KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

止まっているように見える日本

 日本経済全体の成長速度は、世界と比べてきわめて遅い。

 世界経済は、この30年で大きく成長した。アメリカのGDPは1990年の6兆ドルから2017年には19.39兆ドルにまで成長した。約30年で3倍強になっているわけだ。一方、日本は3.13兆ドルから4.87兆ドルと1.5倍にしか増えていない。アメリカと比べてもノロマだが、5倍以上に成長したタイ、7倍に成長したフィリピン、さらに30倍の成長を遂げた中国やベトナムに比べると、止まっているように見えるだろう。