新型コロナウイルスが、ジワジワと商品やサービスの価格に影響を与えている。緊急事態制限が解除されたとはいえ、多くの消費者が慎重な行動を続けており、消費がコロナ前の水準に回復する見込みは薄い。本来であれば、需要が減っているので価格が下がるはずだが、物流の混乱や生産量の低下で供給がタイトになっている。収益を維持するため多くの商品が値上げされており、価格が一方的に下がっているわけではない。(加谷 珪一:経済評論家)

時間帯別運賃は実質的な値上げ?

 新型コロナウイルスの影響が長期化していることから、JR東日本が時間帯別運賃の導入検討を明らかにした。ラッシュ時間帯に運賃を高く設定することで、通勤の分散化を図るとしているが、実質的な値上げになるとの受け止め方が大半である。

 外出の自粛やテレワークの進展で鉄道各社の売上高は激減している。JR東日本の5月における営業収入(鉄道部門)は、前年同月比71%減、6月に入っても46%減となっており、売上高が半分になっている。政府による観光と旅行の需要喚起策である「Go To トラベル」キャンペーンは、東京が除外されたり、高齢者と若者の団体旅行が推奨されないなど、混乱を極めている。

 政府に当事者能力がなくなっており、コロナ対策がまったく機能していないのは、もはや日常的な光景となっているが、こうした状況で鉄道会社の経営が改善する見込みは極めて薄い。