ソレイマニ殺害の報復として、イランはイラク駐留米軍基地へ弾道ミサイルを打ち込んだ。基地に被害は出たが、死者を出さないという寸止め攻撃だった(写真:AP/アフロ)

 1月に起きたイラン革命防衛隊・コッズ部隊のソレイマニ司令官の殺害以降、それまで激しい挑発と恫喝を繰り広げていた米国とイランの関係は沈静化しているように見える。イラン国内での新型コロナの感染爆発に加えて、優れた戦術家だったソレイマニ司令官を失ったことで、コッズ部隊が機能不全に陥っているという声も漏れる。言い換えれば、ソレイマニ殺害という米国のカードが効果的な一手だったということか。

 ただ、筆者は必ずしもそうは見ていない。表面上の静けさの裏で、3月以降、シーア派民兵組織による在イラク米大使館へのロケット攻撃や革命防衛隊の戦艦による米海軍の軍艦船への異常接近、衛星搭載ロケット(SLV)の発射、ベネズエラへのガソリン輸出、イエメン・フーシ派によるサウジアラビアへの越境攻撃など、地域の緊張は徐々に高まっているようにも思える。

 イランは何を考えているのか──。今後の米イラン関係を占うために、ソレイマニ殺害まで時計の針を戻してみよう。