サウジアラビア第2の都市、ジェッダの高層ビル

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は6月7日、3カ月ぶりに1バレル=40ドル台となった。4月20日に1バレル=マイナス40ドルと急激に落ち込んだ後、1カ月半で同80ドルも上昇したことになり、そのスピードはかつての石油危機の時をはるかに凌駕している。

 ここで足元の需給状況を確認してみたい。

協調減産を巡る各国の動き

 OPECとロシアなどの産油国からなるOPECプラスは、6月6日に会合を開き、6月末までとされていた協調減産の規模を7月末まで継続することで合意した。ただし、メキシコがこの合意に参加しなかったことから、7月の減産規模は日量970万バレルから同960万バレルに縮小される。

 OPECプラスの協議では、協調減産の遵守率が低い国々に対して、過去の超過生産分を9月までに帳消しにするよう求められた。イラク、ナイジェリア、カザフスタン3カ国の5月の超過生産量は、日量136万バレルであるが、中でもイラクの遵守率は低い。イラクでは前首相の辞任表明から半年、ようやく新首相が就任したが、政治体制を刷新できるかという難題を抱えた船出となっている。歳入の9割を占める原油売却収入が価格の急落で1月の60億ドルから4月には14億ドルと激減しており、今後も減産合意に反する増産を続ける可能性が高いだろう。