新型コロナウイルスの影響で、株式を中心に金融商品が乱高下傾向にあります。その影響により、投資信託の中にも新規の販売が停止されるものが出てきました。今回は、投資信託の「販売停止」「募集停止」「繰上償還」がなぜ起こるかの理由をみていきます。
前回の記事「証券口座のMRFとは? MMFとの違いも解説」はこちらから
投資信託の「販売停止」が行われる理由
投資信託は「運用会社」が商品設計と運用を担当し、「信託銀行」が投資資金の管理と売買を行い、証券会社や銀行などの「販売会社」が投資家を勧誘する金融商品です。
投資信託がどのように運用されるかの詳細は、下記の記事をご参照ください。
ファンドってどこで買えるの? どうやって選ぶの? 初めての投資信託ガイド
多くの投資信託はいつでも買いたいときに買えますが、まれに「販売停止」や「募集停止」となり、買えなくなってしまうことがあります。「販売停止」はそのファンドの販売実績が悪い(つまり、あまり「売れなかった」)ことや販売会社の投資信託の販売方針に合わなくなったなどの理由により行われますが、今回のように市場の状況(大きく下落した場合や乱高下が激しい場合)が理由になることもあります。
販売停止の原因が販売実績や販売方針の場合、新規販売の再開を期待するのは難しいといえます。一方、市場環境が原因の場合は、市場がある程度落ち着けば新規販売を再開する可能性が高いでしょう。
投資信託の「募集停止」が行われる理由
投資信託の「募集停止」の判断は、運用会社が下します。販売停止は主にネガティブな状況で行われますが、「募集停止」はそのファンドが人気になり資金が集まりすぎた場合や、投資先の市場が過熱しすぎている場合に行われます。
従って、主にポジティブな状況で行われるのが「募集停止」といえます。また、ファンドが「募集停止」になった場合、そのファンドを取り扱っている販売会社は販売停止をします。
募集停止は「信託金の限度額」で判断
投資信託が募集停止になる理由として、そのファンドに資金が集まり過ぎた場合を挙げました。では、資金が集まり過ぎているかどうかは、どうやって判断するのでしょうか?
答えは、投資信託の目論見書に記載されている「信託金の限度額」にあります。目論見書の申し込みメモには、何百億円、何千億円などと信託金の限度額が記載されています。この限度額に運用資産が近づくと、運用会社は一旦「募集停止」の判断を下すのです。
一般的に信託金の限度額は、そのファンドが投資対象とする市場の規模(時価総額)に応じて設定されます。信託金の限度額を設定する理由は、ファンドが市場内で一定以上のシェアを持つと、そのファンドの売買によって市場価格に影響を与えてしまう(池の中のクジラといいます)おそれがあるからです。
投資対象の市場規模が拡大すれば、投資信託は信託金の限度額を増額し、募集を再開します。
「販売停止」「募集停止」期間中でもファンドの運用は続く
投資信託の「販売停止」「募集停止」は、そのファンド自体の運用が終わる訳ではありません。新規の投資はできませんが、その期間の分配金の受け取りやファンドを売却することはできます。
また募集停止の場合は、信託金の限度額を増やすことで新規の募集が再開されます。