4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、7都府県を対象に緊急事態宣言が発令されました。感染がいつ収束するのか見通しが立たない中で、株式や投資信託で資産運用をしている方は、今後どのような行動を取ればよいのでしょうか? 投資信託を運用する資産運用会社、三菱UFJ国際投信の大島良介さんにお話をうかがいました。
三菱UFJ国際投信
商品プロモーション部 推進グループ グループマネジャー
大島 良介さん
2002年大学卒業後、国内大手証券会社勤務を経て2006年より当社。2012年より一貫してマーケティング業務に従事。証券会社では個人投資家を中心に投資相談業務、当社では金融機関向けRM業務の経験を通じ、プロダクト起点のマーケティング業務においても常にお客さまファーストを念頭に置いて業務を推進。
投資環境に関する問い合わせは増加傾向
Q.「解約が増えている」「むしろ資金流入が増えている」など、今回の調整局面で貴社ファンドはどのような影響を受けていますか?
2020年3月の投信市場全体(追加型株式投信(除くETF))の資金流出入(推計値)は、26日時点で+1,275億円となっています。
2月末時点の追加型株式投信(除くETF)のファンド数は約5,500本。そのうち弊社は、約650本と1割強を占めます。
一概に投信市場と同様とはいえませんが、マーケット動向と歩調を合わせるように、短期的に大きく資金が流出入を繰りかえすファンドなどもあれば、つみたてNISA適用ファンドで対面販売を主体としているファンドなどの資金フローは流入傾向にあるなど、まちまちといえます。
Q. 販売会社や個人投資家から増えている質問はありますか?
今後の投資環境についてのお問い合わせが足元、増加しております。
マクロ経済の見通しやファンドの投資対象に対する見通しなど、弊社ホームページに随時掲載しておりますので、ご活用いただければと思います。
投資家一人ひとりが「ゴール」に向け投資を続ける
Q. 個人投資家は現状にどう向き合い、どのような行動をとるべきでしょうか?
新型コロナウィルスの世界的拡大に対し未だ根本的な解決が見つかりません。私たちは、新型コロナウィルスによる混乱がどのように収束していくか、はっきりとした見通しは申し上げることは出来ません。
しかし、こうした局面だからこそ、改めて投資家の皆さま個々人の将来の目標に向けた“投資の目的”について考えていただくことも重要だと思います。
近年、将来の目標(ゴール)に向けた資産管理方法を「ゴ―ルベース・アプローチ」などと呼びます。こうした方法を用いた投資、いわゆる「ゴールベース投資」では、投資家の皆さまそれぞれのゴール(金銭的な目標)に向けて、どのように資産形成を行っていくのかという部分が重要になります。
投資行動の一例として、米国における「リーマン・ショック前後における投資戦略の違い」の実証結果から、漠然と目的を決めずに資産形成をするよりも、何かしらの目標を定め資産形成をする方が続きやすいということがわかっています。
SEI Private Wealth Management社(「Goal-Based Investing」より)によると、リーマン・ショック前(2008年9月初)とリーマン・ショック後(2008年10月中旬)の顧客ポートフォリオの変化は、ゴールベース投資を実践していた投資家は大半がポートフォリオを維持、つまり売買など“何もしなかった”か、追加投資を行っていました。
一方、従来の単一投資ポートフォリオだと、大半の投資家が全売却、あるいは大幅な(ポートフォリオの)変更を行っていました。
例えば株式への投資についても、中長期で企業の成長が続くという前提に立てば、過去リーマン・ショックの時のように損失を抱えたまま全売却し投資をやめてしまうのではなく、投資家一人ひとりが「ゴール」に向け“投資を続ける”という行動事例も一つ参考となるのではないでしょうか。
Q. 最後に個人投資家にメッセージをお願いします。
金融庁が実施した「リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査について(平成31年4月9日)」によると、投資信託を含むリスク性金融商品を購入していない理由(複数回答可)として、「①投資に関する知識がないから(49%)」「②余裕資金が無いから(43%)」「③怖い・不安/リスクを取れないから(39%)」と続きます。
そもそも投資信託は、投資家の皆さまから集めたお金を一つの大きな資金としてまとめ、運用のプロが株式や債券などに投資・運用する商品です。
運用成果は、個々人の投資額、投資タイミング、どのような対象に投資するか等、様々な要因で異なり、一時的に損失を被る場合もあります。
投資信託は、「投資のプロが運用」、「少額から投資可能」という特徴に加え、資産分散の観点から「ファンドの複数本持ち」、制度の利用を含めた「積立投資」などの活用が可能です。投資家お一人ずつのゴールに向け、長期で安定的な資産形成を続けるという観点でご検討いただければと思います。