4月8日、東京・渋谷駅前のハチ公像もマスク姿になっていた(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 4月7日、遂に緊急事態宣言が発令された。この宣言発出が遅すぎたかどうかに議論が集中しているが、問題は、これが予想されたような効果を生むかどうかなのである。

 日本は同調圧力の強い国で、異論を許さない。緊急事態宣言に反対しようものなら、非国民だと非難される。しかし、この宣言に至るまでの経過、宣言発令後の政府や東京都の反応には問題が多い。

「クラスター潰し」に注力で、市中感染対策が疎かに

 第一に、正確な感染者数が把握されているかということである。毎日東京都が発表する感染者数のグラフと、PCR検査実施件数のグラフを比較すれば、両者に正の相関関係があることは確かである。PCR検査を増やせば、感染者数が増えるのは当然である。

 これまで、日本は感染者も死者も少なく抑えてきたが、それはクラスター対策が一定の効果を上げたためである。しかし、それに重点を置きすぎたために、市中感染対策を怠ってきた。端的に言うと、PCR検査をあまり実行しなかったのである。

 患者が出ると、その濃厚接触者のみを検査する。そういう態勢を取ってきたが、その陰で検査もされずに放置された市中感染者が急増していたのである。軽症だったり、症状が無かったりするので、分からない。阪神の藤浪晋太郎投手が嗅覚喪失の症状で陽性が判明したため、この兆候が出た元気な感染者が捕捉しやすくなった。森三中の黒沢かずこもその1人だが、それでも再三PCR検査を求めたが、拒否され続けたという。

 これが実態で、安倍首相はPCR検査を一日に2万件に増やすと言っているが、今はまだ4000件しか実行していない。なぜドライブスルーのPCR検査を導入しないのだろうか。時間も短縮でき、効率も上がるし、院内感染の防止にもなるのである。今の保健所の体制だと、ドライブスルー方式を導入しないかぎり、2万件の実現は無理である。