森まさこ法務大臣(3月9日の参議院予算委員会で、写真:つのだよしお/アフロ)

 出世する人と、しない人の違いって、何だと思われますか?

 そんな違いは、多分ないと思うのですが、ある人材派遣のプロが言っていたことは真理をついていると思います。

「ある企業で、出世する人を追っていくと、最初に特定の上司についた人が伸びている」というんですね。

 これ、「人を伸ばす上司が例外的にいる」ということではないのだそうです。その上司に教えられた社会人としての「常識」が、結果的に仕事を伸ばすものになっている。

 例えば、いただいた名刺の管理、年賀状をどうするか、盆暮れの気遣いみたいなこともそうですが、日々の伝票整理、いやもっといえば、言葉遣いの一つひとつ、手紙やメール、毎日書く書類の端々まで、学校では教えない一切合切が、実は社会人の初期に、上司からもらったものを無自覚に使っているのではないか?

 そして、それが出世というか、それ以降の社会スタイルを決定的に分けてしまって、それによって伸びる人、出世する人が出やすくなっていたりする、らしい・・・。

 私が聞いた、人材派遣のプロからのお話は、ざっとこのようなものでしたが、その時点で私も40歳を回っていましたので、なるほどと思わざるを得ませんでした。

自分の常識を疑える社会人か?

 東京大学というところに勤めるようになって22年目となりました。これは、私が助教授に着任した頃に生まれたり、その頃はまだ影も形もなかったりした連中がいまやキャンパスや教室を闊歩していることを意味します。

 初期の学生諸君は中年に達しており、その間の各人の春夏秋冬のようなものも、かなりの人数(何だかんだで数千人オーダー)見てきたことになります。

 こと東大生に関していえば、1、2年生の社会常識欠如の傾向は著しく、敬語は使えない、メールはまともに書けない、約束やお金に関する事柄にルーズ・・・率直に言って目を覆うばかりなのですが、うるさい小姑みたいになりたくないので、9割がたは黙ってニコニコしています。

 先ほどの人材育成の話を聞いて、そうだよなと思ったのは、私自身の経験に照らしても納得がいったからです。

 私が最初に仕事らしい仕事でアルバイトしたのは「アルク出版企画」という編集プロダクションで、社長の秋山晃男さんは作家・詩人の辻井喬(経営者としては堤清二)、作曲家の武満徹各氏などのプロデュースなどもしていました。