中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染はおさまる気配を見せず、全世界に広がりを見せています。その影響は世界経済にもおよび、2月末から3月にかけて世界の主要株価指数が大きく下落しました。今回のマーケットの急変動は、2008年のリーマン・ショックをも思い起こさせます。株式や投資信託で資産運用をしている方にとって、株価の急落はウイルスの感染拡大と並ぶ不安材料かもしれません。
そこでMonJaでは、著名なエコノミストやファイナンシャルプランナー、当サイトの執筆者などを対象にアンケートを実施。個人投資家のみなさまが新型肺炎にどう向き合えばいいか、アドバイスをいただきました。
回答者④ 福田 猛さん
ファイナンシャルスタンダード代表取締役
大手証券を経て、2012年IFA法人ファイナンシャルスタンダードを設立。2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザー総合1位を受賞。
福田猛さんの過去のインタビュー記事はこちら
積立投資の場合は継続することに価値が出る時期
① 「新型コロナ」に端を発する今回の調整局面で、個人投資家からはどのような相談が増えていますか?
私たちファイナンシャルスタンダードでは、長期的な資産運用をご提案しているので、お客様から今回の件で不安になってご連絡が増えたということはないです。
逆に株式市場が下落したため、積立をしているお客様からは毎月の設定額を増やしたいというご要望があったりもします。
② 大きな調整局面で、個人投資家がやってしまいがちなミスややってはいけない行動には何がありますか?
こういう局面ではマーケットに翻弄されて、売買を行ってしまわないように気を付けることが大事です。NYダウが「コロナ拡大」のニュースに反応して1,000ドル下げたかと思うと、次の日は「世界的な金融緩和」のニュースが出て1,000ドル上昇といったことが起こります。
激しく価格変動が起こると目先の株価の動きに反応してしまいます。株価が下げた時に怖くなって売却し、株価が上昇すると遅れまいと買うといったことをしてしまいます。短期売買が目的なら良いかもしれませんが、再度ご自身の運用の目的に立ち返る必要があります。
③ 個人投資家は現状にどう向き合い、どのような行動をとるべきでしょうか?
長期的な資産運用を行うのであれば、積立投資か一括投資という2つの手法があります。どちらも「分散」がキーワードです。積立投資は時間分散。一括投資は資産分散を行います。
資産分散とは株式や債券に分散投資を行い、リスク許容度に合わせて配分比率を決めて運用することです。リスク許容度が高い人は株式比率が高く、リスク許容度が低い人は、債券比率が高くなります。
これを前提にどう向き合うかを考えます。積立投資の場合は、価格が下落すると安くなり量がいっぱい買えるため、継続することに価値が出る非常に重要な時期となります。したがって、止めないことが何よりも重要です。
一括投資の場合は、リバランスを行います。株価下落によって、当初決めた配分比率がズレます。株式の比率が下がり、債券の比率が高くなります。リバランスとは、元の比率に戻すため、一部債券を売却し、株式を購入する行為です。
つまり、安くなった株を買うわけです。このようなメンテナンスを丁寧に行うことで、株式相場が上昇した時に効果が出ます。冷静に正しい知識を持ちニュースに翻弄されないことが大事です。
ゴールは今ではなく先にある。ただ粛々と実行するのみ
④ こんなタイミングだからこそ、注目したい金融商品や投資手法はありますか?
資産運用の世界において、絶好のタイミングを逃さず投資することは神業です。資産運用とは上記の通り、積立投資や分散投資を粛々と継続することです。このように申し上げると面白味のない回答になってしまいますが、資産運用とはまさに面白くないものです。ゴールは今ではなく、先にありますから今はただ粛々と実行するのみです。
一方で、今回のように○○ショックが起こった場合は、「必要以上に」株価が下落するケースも散見されます。たとえば、ディズニーランドを運営しているオリエンタルランド。外国人客の急減や休園で売上ダウンは必至で、株価も大きく下げています。
株価は先の見通しを織り込みますから、今後コロナ問題が収束し、通常通りに戻ると、株価も回復する可能性があります。個別株式に興味のある人は複数回に分けて購入していくのも1つの方法です。
⑤ ご自身の資産運用やお金の使い方で見直した点はございますか?
私ももちろん資産運用を行っていますが、何も変化はありません。毎月投資信託を自動設定で購入する積立投資では今月も来月も株式資産を購入することになりますし、一括投資では分散投資をしており、継続保有を続けます。私の資産運用のゴールは今ではなく、もっと先にあるからです。
⑥ 投資を継続しようかどうか迷っている個人投資家にメッセージをお願いします。
長期的な資産運用を行う場合、市場の下落は何回も経験することになります。価格変動と付き合っていかないといけません。継続することが大切です。
ただ続ければ良いというものではなく、正しい理屈で続けることが大事です。正しい知識を持っていれば、不安になった時に立ち返ることができます。こういう時こそ、マーケットの予想に時間を使うのではなく、資産運用の基本(時間分散、資産分散)を学ぶチャンスです。