IFAにとって取引業者は、商売上のインフラである
金融庁に掲載されている仲介業者のリストを見ると、委託する取引業者(ほぼ証券会社)が必ず記載されています。複数の取引業者と契約する仲介業者もそれなりにありますが多数派は1社のみの単独契約です。意地悪く見れば、IFAってどこかの証券会社の出先機関じゃないの? と勘ぐりたくなります。本来、独立した立場であれば、多くの取引業者と契約してもよさそうですが、実際にそうならない理由はなぜか。IFAにとって取引業者は、商売上のインフラだからだと思います。
仲介業者は、取扱商品や売買ツール、営業支援、システム使用料など取引業者が提示する条件を評価したうえで契約を検討します。品揃えが同様であれば複数の取引業者と契約してもコストの無駄と考えてしまうかもしれません。取引業者(証券会社)も、仲介業者との付き合いについて温度差があります。エース証券やPWM日本証券といった証券会社は、IFA支援を前面に打ち出したビジネスモデルを謳っています。意外なところでは、SBI証券や楽天証券といったインターネット証券会社が最近、IFAとのパートナーづくりに力を入れています。ネットで取り込めなかった顧客層を、IFAを通じて広がられるとしたらメリットは大きいはずです。
IFAにとってインフラであり、個人にとっては実際に証券口座を開設する先が取引業者(証券会社)になるわけです。IFAという仕事を理解する上で、取引手数料とコミッションという関係は大事なポイントです。個人は、口座を開設する証券会社に取引手数料を払います。でも、IFAはボランティアで個人の代わりに売買しているわけではありません。個人が支払った取引手数料から、IFAに対して報酬(コミッション)が支払われます。
ここで1つ、注意したいことがあります。例えば、同じ楽天証券であっても、個人が直接、ネットで売買する証券口座と、IFAを経由して売買できる証券口座は異なります。取引商品は、どちらの口座も同様で、投資信託を中心にほぼフルラインアップで提供していますが、IFA口座では加えて、IFA専用のラップなども用意しています。また、IFAが個人顧客へアドバイスを行う際のサポートとなるオリジナルアドバイスツールの提供をIFA向けに行っています。
コミッションから成果報酬(フィー)に変えていこうという動き
楽天証券に限らずIFA口座では、IFAへの支払報酬が発生します。取引業者や契約によって異なり、どうしてもナイーブな話になってしまうのですが、数割の支払報酬(コミッション)率と表現しておきます。いずれにしても、この手数料と報酬の構図では、個人がたくさんの金額を回転売買で取引するほど、IFAの報酬が増えることになります。IFAがプランニングした売買方法で、利益が出たのならよいのですが、損失を与えても得をするのがIFAだけになると、個人とIFAには利益相反が起こってしまい、顧客本位へ疑問符が生じてしまいます。
IFAで生計を立てるには、コミッションが必要になるものの、手数料に意識が向くほど、個人顧客の利益とギャップが生じてしまう。また、仕組みが複雑な金融商品になるほど、取引手数料が高くなる傾向があるので、こうした商品を顧客に勧めるインセンティブも働いてしまうのではと思ってしまいます。これがIFAやその関係者が現状抱えるジレンマのように思えます。どうすればいいのでしょう? そこでヒントとなるのは、報酬体系をコミッションから成果報酬(フィー)に変えていこうという動きです。
楽天証券のIFA口座では新たに「管理口座コース」が設定されました。個人の取引手数料をネット取引口座と同じ水準に下げ、預かり資産額の年1%を手数料として個人顧客に支払うコースです。IFAの報酬は、預かり資産額1%分から割り当てられます。顧客の資産が増えるほどIFAの報酬も増すため、個人顧客とIFAの利害が一致するというわけです。このコースの設定はIFA法人ごと、個人顧客ごとに選択できるのですが、サービスレベルの維持などの懸念点があるため、「まだ数%の利用に過ぎない」(楽天証券IFA事業部)とのことです。
いまIFAが成果報酬への足掛かりとして力を入れているのが、ラップ口座です。証券会社やIFAと投資一任契約を結んで、資産残高に応じて年率2%ほどの報酬を支払い、運用を丸ごとおまかせするプランです。運用成果がでなければ、報酬分マイナスとなるのはデメリットですが、投資成果が高まり資産残高が増えるほどIFAの報酬が増えるため、結果に対するコミットが期待でき、顧客との利益相反が起こりづらいと言われます。
IFAとの出会いはお見合いに似ています。IFAとの関係に力を入れる証券会社に問い合わせてもいいでしょうし、IFAや仲介業者が開催するセミナーに足を運んでもいいでしょう。最低でも3社以上のIFAに相談をして提案を受けてみたいものです。提案内容とともにコスト体系についても、分からない点はしっかり質問しましょう。
時間もかかるし手間もかかる。でも、自分の大事なお金は、中立的な立場の資産アドバイザーを得て納得できる運用をしたい――。その熱意があれば、いろんなIFAとの出会いは必ずや自身の金融リテラシーを上げてくれるはずです。