東日本大震災は、被災地以外の日本企業にもサプライチェーンの分断など甚大なダメージを与えた。この出来事をきっかけに、今後、日本企業が国内のみならずグローバルでの生産、物流網の再整備に着手しなければならないことは間違いない。
また、震災の影響で落ち込んだ日本の消費活動や設備投資が元通りになるには、時間がかかるであろう。その中で企業が業績を維持していくためには、新興国を中心とした海外市場に、これまで以上に積極的に挑んでいく必要が出てくるだろう。
このように日本企業はさらなるグローバル化を余儀なくされる。
それは同時に情報システムのグローバル化対応も進めなければならないということである。海外で売れているかどうかを管理するだけではなく、システムをフルに使ったコラボレーションや、迅速な判断のための「市場の見える化」は必須となってくる。
しかし、日本企業にとってシステムのグローバル化のハードルは極めて高い。今までシステムの「海外」展開を敬遠してきた日本企業にとって、底知れない難しさを感じさせるものだろう。「ERP」などの基幹システムのグローバル導入にチャレンジしてきた企業でも、散々苦労してきて「もう二度とあんな経験はしたくない」と考えるところも多いに違いない。
情報システムをグローバル化するに当たっては、各国の商習慣への対応や、言葉も文化も違うユーザーの啓蒙・教育など、乗り越えなくてはならない課題があまりにも多い。情報システムのグローバル化は確かに難事業である。
容易になった海外とのコミュニケーション
しかし筆者は、対象領域によっては、意外と迅速かつスムーズなグローバル展開が可能な時代になってきたのではないかと考えている。
ここでキーになるのは、震災時にも活躍したツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアだと思う。企業の情報系システムのグローバル化においては、ソーシャルメディアの普及はプラスに働くであろう。
企業での情報系システムの活用は、エッセンスを突き詰めると、結局はコミュニケーションのリアルタイム化だ。そして、そのための共通言語、共通ルール、共通管理項目をいかに適用するかだ。その意味で「グローバル共通サービス」であるソーシャルメディアは、今後のグローバル情報システムのヒントになるのではないだろうか。
以下では、このソーシャルメディアが持つ特性を3点挙げてみたい。これらの特性を考えると、ソーシャルメディアの利用者・理解者が増えることが、グローバル情報システム展開をこれまでより容易にすると思えてならない。
第1に、ソーシャルメディアが海外とのコミュニケーションのハードルを下げたという点である。