新国立競技場。球技場の外側に陸上競技のトラックが存在する(写真:ZUMA Press/アフロ)

(後藤 健生:サッカージャーナリスト)

 オリンピックイヤーを迎えた2020年1月1日、昨年末に完成した新国立競技場で天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権大会の決勝戦が行われた。

 決勝戦では、アンドレス・イニエスタなど世界的なビッグネームと次々と契約を交わして強化してきたヴィッセル神戸が“常勝軍団”鹿島アントラーズと対戦。前半の立ち上がりから主導権を取った神戸が2点を先取。後半は一転してシステム変更した鹿島が攻め続けたが、故障で主力メンバーを欠いたせいか、2点をリードされて焦りがあったせいか、鹿島はフィニッシュ段階での精度が足りず、神戸が前半のリードを守り切って2対0で勝利。クラブ創設25年で初めてのタイトルを獲得した。

フランスの巨大スタジアムの「後利用」問題

 天皇杯の決勝は1968年1月14日の第47回大会から国立競技場で開催されるようになった。翌1969年からは元日開催となって正月の風物詩として親しまれてきたが、旧国立競技場が取り壊されたため、国立開催は6年ぶりである。そして、新国立競技場にとってはこの天皇杯決勝が初めてのスポーツイベント。いわゆる「こけら落とし」となったのだ。

 新国立競技場は、旧競技場に比べれば格段に巨大なスタジアムとなったが、威圧感がなく、穏やかな印象を受けた。

 たとえば、最初の国際コンペで1等となり、その後物議を醸すこととなったザハ・ハディド案では巨大なキールアーチが特長だったが、完成したスタジアムにはそうした人を威圧するような巨大な構造物が見当たらない。

 フランスの首都パリ郊外のサンドゥニにある「スタッド・ド・フランス」(フランス・スタジアム)は新国立競技場と比較されることが多い。1998年、日本代表が初めて予選を突破して参加したサッカーのワールドカップのために建設された8万人収容のスタジアムだ。新国立競技場と同じく陸上競技とサッカー、ラグビーの兼用スタジアムであり、大会終了後の「後利用」が問題になったあたりも共通している。