火災保険で重要な「新価」と「時価」

 最後に、「損害保険」の火災保険についても触れたいと思います。

 最近ニュースでもよく見かけますが、今回の台風のような大災害にあったのに、保険金が少ししか払われないケースが増えています。
 なぜ、保険金が支払われないのでしょうか?

 それは、火災保険に加入する段階で、一番重要なことが置き去りになっていたからです。特に、中古の住宅を購入するケースでよく見られます。
 保険価格を決める要素に「新価」と「時価」があります。火災保険は、新価と時価のどちらを基準にしても加入できるのですが、新価より時価の方が低い場合、新価で加入していないと、被災した家を元通りにするのに必要な保険金は100%補償されません。このルールが見過ごされているのです。

住宅と火災保険今の家と同じ水準の家を新しく建てるのに必要な「新価」を基準とした火災保険に加入しないと、万一のときに十分な補償を受けられない可能性がある

 新価と時価について、例を挙げて説明します。
 30年も前に建築された、当時1000万円だった建物に、古い建物だからいいや!ということで1000万円で保険を付けた。これでいいの?
 答えは×です。100%の補償が必要だったら、1000万円ではなく、約2000万円の保険に加入しなければならなかったのです。
 これが、今の時点で新たに建て直したらかかる価格「新価」の考え方です。「時価」は30年前の、これまでの経済成長率が加味されていない価格です。新価は2000万円で、時価は1000万円。ですから、当然「新価」で保険加入しなければ、災害が起きても保険金の削減対象になります。

 1000万円の損害にあったのに、支払いは500万円だった! あり得る事実です。特に積立で火災保険に加入しているケースなどは、保険料の支払いが高めになります。高い保険料を嫌って支払額を抑えると、保険金を減らすことになり、災害の場合に十分な補償を得られないことも考えられます。

 「保険屋さんに任せてるから大丈夫」ではなく、保険料と補償内容をきちんと確認して「使える保険」を選ぶことが大切です。「災害大国」の日本で暮らしているのですから、ご自身の資産を守る意味でも、火災保険も資産運用の一部ととらえなければいけないでしょう。