投資におけるリスクとは「実現しない可能性」

寺本名保美寺本名保美
トータルアセットデザイン
代表取締役

 投資において「リスク」という言葉はさまざまな意味で使われます。一般的には「損失」のことを「リスク」と表現することが多いですが、この言葉を正確に使うなら「損失を被るリスク」・「損失が発生するリスク」となり、「リスク=損失」ではありません。

 投資におけるリスクとは「不確実性」と言い換えるとわかりやすくなります。「不確実性」とは「確実でないこと」つまりは「実現しない可能性」のことを言います。
 例えば「100%確実な利益」にはリスクがない、というのと同様に、「100%確実な損失」にもリスクはありません。100%確実に損失を出すことが事前に確定しているのであれば、その投資をしなければよいので、その損失には「リスク=不確実性」が存在しないのです。

 投資という行為は基本的には何らかの収益(リターン)の獲得を目的としています。願わくば「100%確実な利益」を探して投資したいところですが、世の中にはそうした投資は原則として存在しません。なぜなら、もし存在したとしても投資資金が瞬時に集中することで、収益の源泉はすぐに枯渇してしまうと考えられるからです。したがって、現実の投資対象となるものには大なり小なりの不確実性が必ず含まれていることになります。

 期待する収益が実現するにあたっての不確実性が大きい投資は「リスクが高い」と表現され、不確実性が小さい投資は「リスクが低い」と表現されます。リスクが高い投資では、期待されるリターンも高くないと投資資金が集まりません。一方、リスクが低い投資には投資資金が集まりやすいので、期待されるリターンは相対的に低くなり、いわゆる「ハイリスク=ハイリターン、ローリスク=ローリターン」という構図ができあがります。

不確実性という障害をいかに避けながら果実を得るか

 逆にいえば、投資によって得られる収益の源泉はこの不確実性の存在にあるということができます。
 山の頂上に果実があることは誰でも知っているとして、その頂上にたどり着くまでの道のりにはさまざまな障害があります。倒木で道がふさがれることもあるでしょうし、突然の暴風雨に見舞われることもあるでしょう。行きついた頃には、すでに果実は他者に収穫されてしまった後かもしれません。

 投資というものは収益(リターン)という美味しい果実を探す旅です。どこに果実があるかを見極めることも大切ですが、その果実に行きつくまでの道中に隠れているさまざまな障害をいかに回避し、旅を続けていくことができるかの方がもっと大切なことなのです。
 期待するリターンが大きければ大きいほど障害物も大きくなります。自分の行く手にどのような障害物があり、どのような気象変動が待ち受けているかを理解し対策を練っておくことが投資の成功の第一歩となります。

 このコラムではその時々の金融市場に潜んでいるさまざまな不確実性について、できるだけわかりやすく解説していきます。
 リスクはリターンの源泉です。「リスクの女神」を味方につけて、賢く資産運用をしていきましょう。

第2回 ブレグジットとポンド危機