ウーバーイーツの配達員。2019年6月8日、英国ロンドンで撮影(写真:ロイター/アフロ)

(加谷 珪一:経済評論家)

 配達員による労働組合結成や商品投げ捨て事件など、このところウーバーイーツ(UberEATS)がメディアに取り上げられるケースが増えている。これだけ話題になるということは、ウーバーが急速に社会に普及していることの裏返しといってもよいだろう。

 同社の配達員に代表される、いわゆる「ギグエコノミー」(ネットを通じて単発の仕事を受注する働き方)は、労働に対する価値観を一変させるとも言われているが、一方で、低賃金の温床になる可能性も指摘されている。今後、拡大が予想されるギグエコノミーについて私たちはどう対処すればよいのだろうか。

配達員が労働組合を結成

 飲食店の宅配代行サービスを手がけるウーバーイーツの配達員らが2019年10月3日、労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成した。

 ウーバーイーツの配達員は、会社と雇用契約を結んでおらず、法律上は社員という扱いにはならない。最低賃金や労災などについて定めている労働法制はあくまで労働者を保護するものであり、個人事業主は経営者という扱いなので法律の対象外となる。ウーバーの配達員も、実態は従業員に近いのだが、法律上は個人事業主であることから、ケガをした場合などでも労災保険は適用されない。

 ウーバー側もこうした問題について十分認識しており、配達中の事故でケガをした場合には25万円を上限に治療費を支払う制度をスタートしているが、十分とは言えない。新しく結成された組合では、配達員への補償拡大や報酬の透明化などをウーバーに求めていくという。

 “会社に完全にコントロールされた労働者”と“個人事業主”の違いが際立ってしまったのが、10月に発生した商品投げ捨て事件だろう。