テムズ川とロンドンの街並み

「リスクのないところにビジネスチャンスはない」

 ビジネス社会でしばしば使われる「格言」です。リスクを冒してはじめてビジネスで大きな成功をつかみ取ることができる、というわけです。

 しかし、だからといって、むやみにリスクを背負っては成功は得られません。不必要なリスクはできるだけ減らし、必要なところで果敢にリスクをとりにいく――これが、ビジネスで成功する秘訣であるはずです。

 では、どうすればそんな芸当が可能になるのでしょうか。1つの答えは、保険の活用です。

 現代のわれわれは、保険によって事業の様々なリスクをカバーしています。保険が発達するためには、その基礎となる確率論と統計学の発展が欠かせませんでした。確率論と統計学が発達し、それが保険業を発展させ、さらにはビジネスを、ひいては世界を大きく変えていったのです。

保険の起源

 保険の発展は、交易や貿易(他国との交易)の発展とともにあったと言うことができます。はるか昔は、遠隔地間での物品のやり取りには、そのルートが陸路であれ海路であれ、自然災害や盗賊の存在などのため、大きなリスクの伴うものでした。その交易・貿易のリスクをヘッジするために、保険は発展しました。

 世界最古の保険は、前2000年代のバビロニアまで遡ると言われています。交易を行うキャラバン隊が災害や盗賊に遭ったときに、その侵害を補填する仕組みがあったそうです。また。古代ギリシアやローマでも保険に似た仕組みが利用されていたようです。