「マット安川のずばり勝負」ゲスト:円山法昭、佐藤優/前田せいめい撮影円山法昭氏(左) 佐藤優氏(右)

 マット安川 今回の大震災は誠に痛ましい限りですが、発揮された国民の団結力は胸打たれるものがありました。

 報道では伝わらない政治家の動きや最新情報を佐藤優さんから、経済界から見た今回の大震災について円山法昭さんから、それぞれお聞きしました。
 

今は危機を乗り切ることが最優先。批判は後からでよい

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏
元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、著書・訳書多数。近著に『この国を動かす者へ』 (撮影:前田せいめい、この稿すべて)

佐藤 現在、福島第一原発が危機的状況にあります。ですから今はとにかく政府を支持することです。

 これは政府を批判するなということではなく、当然批判はしなければいけないけれども、それは少し後でやりましょうと。今は政府を助けて、特に原発の危機をどうやって乗り切るかの重要な時です。

 私は国に捕まったことがあるような人間で、政府も好きではないし、特に菅(直人、首相)さんには批判的ですが、その私ですら批判度は弱まっています。それは緊急事態だからです。

 批判は後でします。今は菅直人という固有名詞は関係なく、内閣総理大臣という役職の人に権力を集中させないと、この危機は乗り切れないんです。

 私は第2次世界大戦後の日本のシステムには3つの原理があると思っています。合理主義、生命至上主義、個人主義です。

 津波対策も原発の安全対策も、合理的に考えられるところでは最大限でやりました。ところが、人間の合理性を超えることが起きた。つまり合理主義の限界に突き当たっているんです。

 また生命至上主義と個人主義においては、原発の作業員たちは仕事を辞めることができます。職業選択の自由を阻止できない。内閣総理大臣であっても、国のため国民のために命を捨てろとは命令できません。

 戦後的な生命至上主義、個人主義ではもはや解決できない状況にある。これが今の日本が直面している現実です。朝日新聞でさえ社説で、誰かがリスクを冒して命を捧げなければいけない状況に来ていると書いています。

 そうした中で、命がけで作業している東京電力や関連会社の原子力専門家がいる。その人たちが仕事をやりやすい環境をつくることが急務だと思います。今しなければいけないのは、こうした人たちにエールを送ることです。