(姫田 小夏:ジャーナリスト)
1994年生まれの王梁君(仮名、25歳)は、典型的な“富二代”だ。富二代とは「富裕層の2代目」という意味の中国語である。両親は国内外にいくつもの不動産を保有しており、王君自身も親の資産で何不自由なく生活をしている。愛用のポロシャツのブランドはイタリアのエルメネジルド ゼニア。普段履いている数万円のスニーカーはいつもピカピカで、汚れがつくたびに立ち止まってはティッシュできれいにふき取る。観光旅行で日本を訪れた際は、母親名義の銀聯カードで高価なブランド品を買いまくっていた。
王君は大学卒業後、中国のある有名企業に勤めたものの、ほどなく退職した。聞けば、「親のコネで決まった就職先」だったが、仕事への興味は持てなかったようだ。現在、仕事はしていないが生活にはまったく困っていない。両親の莫大な資産はいずれ彼のもとに入ってくるし、一人っ子だから相続争いもない。
中国では、彼のようなリッチな若者は今や珍しくない。90后(1990年代生まれ)の富二代が増え、「ハングリーで優秀」な中国人像が崩れ始めている。
履修科目を親に相談
都心のある日本語学校には、中国人留学生が続々と入校してくる。その学校で日本語を教える武藤洋子さん(仮名)は、最近の中国人留学生には今までとは違う特徴が見てとれるという。「自分で決断できない子が増えている」というのだ。
「この学校には、日本の大学進学を目指す高卒の中国人留学生が少なくありません。彼らは、日本の大学に進学するための履修科目を選定する際、自分で決められない。『どうするの?』と訊ねると、『お母さんに聞いてからじゃないと答えられない』と言うのです」