統計資料を追うと、意外な事実が見つかることがあります。「日本は零細農家が多く、米国は大規模農家が多い」とされています。実際はどうなのでしょうか。米国農務省統計(農業センサス 2007)を見てみましょう。
まず、「1農家あたりの平均面積」(Average farm size)は418エーカーです。1エーカーは約4000平方メートルで、日本的に換算すると4反歩、5分の2町歩に相当します。つまり、1農家あたりの平均面積は約160ヘクタール、160町歩以上となり、さすが米国です。
「規模別の農家数」(Farms by size)を見ると、統計に表れる最低単位は「1~99エーカー以下」(日本的に換算すると「4反歩~39町歩」)となっています。そうした「小規模農家」が2007年の統計では54.4%と農家の半分以上を占めます。
次に「売り上げ」(Farms by sales)を見てみましょう。売り上げの最低単位は9999ドル以下。1ドル=80円として年間売り上げ80万円以下の農家が半分以上。10万ドル(800万円)以上の売り上げのある農家は全体の16%しかありません。
耕作面積こそ桁が違いますが、米国も日本同様、多くの農家が専業では食えず、兼業農家化していることが分かります。米国も日本も、農業の置かれた状況はそう変わらないようです。
日本の大規模農家が労働生産性を上げられない理由
日本で「農業改革」というと、必ず挙げられるのが大規模化です。「大規模化すればコストダウンができて、消費者は安く農作物を買うことができるし、国際競争力もつく」と考える人が多いようです。
この考えが間違っているとは言いません。実際、大量生産するとコストを減らしやすいのは事実です。しかし、大量生産すれば確実にコストが落とせるというのは、農業のみならず工業においても幻想です。
コストダウンには大きく分けて「原価の低減」と「労働生産性の向上」の2つの方法があります。農業のコストダウンを主張する方は、たいてい後者を念頭に置いています。