米軍内部でさえも、そもそもそのように大損害を前提とした作戦を実施する意味があるのか? という疑問が生じているのだ。
実際に水陸両用戦のエキスパートであるアメリカ海兵隊でも、中国軍のような近代兵器を擁する敵が布陣している海岸線への強襲上陸作戦に対しては(展示演習でのデモンストレーションは別として)極めて慎重な姿勢を示している。そのため、どうしても上陸作戦を実施する必要がある場合には、海岸線周辺に敵が待ち構えていない「ギャップ」を見つけて、その「ギャップ」にオスプレイや高速水陸両用車(開発はまだ成功していない)でスピーディーに上陸する以外に方策はない。
ただし、「場合によっては強襲上陸作戦を実施する」というオプションは、やはり手にしておく必要がある。最初から放棄してしまうよりは、そのほうが少なくとも敵方にとっては厄介な相手となるからだ。
そこで浮上したアイデアが、戦闘用水陸両用ドローンである。すなわち、ステルス性能に優れ、かつ高速海上航走能力を与えられ、ミサイル発射装置や機銃などを備えた、無人水陸両用戦闘車だ。
もちろん、いくら海上を高速で航走するステルス水陸両用ドローンといえども、海岸線に到達するまでの海上や、敵陣に肉薄する陸上で、敵のミサイル攻撃を被ることは避けられない。しかし多数の水陸両用ドローンを一斉に海岸線めがけて接近させた場合、敵のミサイル攻撃によって多くが撃破されることになっても、その段階で敵の火砲のポジションを把握することができる。そして、それら敵の防御戦力を航空機や艦艇からの攻撃によって叩き潰すことが可能となる。敵の防御戦力を破壊したら、今度は海兵隊員が乗り込んだ水陸両用装甲車やオスプレイなどによって、海兵隊員を送り込むのだ。
警戒を強める米軍
アメリカ軍では、このようなアイデアはあくまでアイデアに過ぎなかった。なぜならば、アメリカでは海上を高速で航走する水陸両用戦闘車(アメリカ海兵隊が現代戦に対応できなくなってしまった水陸両用戦闘車「AAV-7」の後継車両として熱望していた)の量産化に失敗し、現時点では、海上を高速で航走するステルス水陸両用ドローンを生み出すことはできないからだ。