世界的に食料価格が上昇している。国連食糧農業機関(FAO)が発表している世界の食料価格指数(2011年1月)は230ポイント(1990年=100)に達し、連続7カ月の上昇となった。1990年に同指数が計算され始めてからの最高記録である。

 中国でも食品価格が急騰している。以下の図に示しているのは、中国における2000年以降の消費者物価指数(CPI)、生産者価格(PPI)、食品価格指数の推移である。ここに来て、食品価格が大きく上昇している。

中国における食品価格、生産者価格(PPI)と消費者物価指数(CPI)の伸び率の推移
(資料:中国国家統計局)

 温家宝首相は、当面の政策トレンドとして食品価格を抑制すると強調している。そのために、金利や預金準備率が引き上げられているが、目立った効果が表れていない。むしろ、これ以上、物価を人為的に抑制すると、経済がハードランディングする恐れがある。

食料価格高騰の原因とされる3つの説

 なぜ世界の食料価格は上昇しているのだろうか。

 巷では、3つの原因が指摘される。1つ目は2010年来、世界の主要食糧生産国で干ばつや洪水が起きているという「自然災害説」である。2つ目は、中国やインドなど新興国の食生活の変化によって需要が供給を上回っているという「ディマンドプル説」である。3つ目は、先進国の低金利政策によってもたらされている過剰流動性に起因する「食糧投機説」である。

 この中で自然災害説とディマンドプル説は、食糧の需要と供給の不均衡に原因を求める考え方である。確かに、昨今、オーストラリア、ロシア、中国などで干ばつや洪水が起き、農業生産に影響を及ぼしている。しかし、深刻な供給不足が起きているわけではない。