このままいけば、今年(2019年)の10月から消費税が現在の8%から10%に引き上げられる“予定”だ。その際に5%または2%をポイントで還元する施策が打ち出される可能性が高まっている。このあたりはニュースでも報じられているから読者もよくご存知だろう。
しかしこれが流通業をはじめ産業界に大きな混乱をもたらしている。軽減税率も愚策だが、ポイント還元はそれに輪をかけた愚策である。
「中小」かどうかをどこで線引きするのか
政府が打ち出しているのは、中小の店舗で買い物をした際、クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレスで支払った消費者に、買い物で使えるポイントを提供するというものだ。ポイント分は政府が補助する。期間は来年10月1日の消費税率引き上げ後から9カ月間。
ここでまず問題になるのは、ポイントの還元率の決め方だ。「中小の小売店などでは5%、大手系列のチェーン店などでは2%」とされているが、そもそも「中小」という区分をどこで線引きするのか。
現状、「中小」を規定する法律は中小企業基本法しかない。そこには小売業だと「資本の額又は出資の総額が5000万円以下の会社または常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人」と規定してある。しかし、スーパーマーケットでも、資本金5000万円以下で年商1000億円以上売っているチェーンが6社あるという。ヨドバシカメラも資本金5000万円以下で5000億円売っている。一部では年商100億円で線引きしようという意見もあるようだが、それでも混乱は免れないだろう。
規模の大小にかかわらず、小売店は市町村区において個店同士で戦っている。どんな基準であれ、こういう杓子定規な線引きをすること自体、資本主義の原則である公平な競争ということからあまりにかけ離れていると言わざるを得ない。