米国ペンシルベニア州の南東部にある人口5万6000人の町、ランカスター。これといった産業もなく、高い失業率と貧困に苦しむ小さな町だ。この町のある公立高校が、突然全米の注目を浴びたのは3週間前のことだった。

 マッケースキー・イースト高校では、特定の人種の生徒が他の人種より成績が悪いことが問題になっていた。州の学力テストで白人生徒の6割が平均以上の成績だったのに対し、黒人生徒では3割にとどまっていたのだ。

小さな高校が始めた黒人生徒だけの特別プログラム

 同高校のアンジェラ・ティルマン先生は、いかに黒人生徒の成績を上げ、人種間の成績格差を縮めるかに頭を悩ましていた。

 ある時、ティルマン先生は、「黒人生徒を男女に分けて、生徒たちが尊敬できるような人物に定期的に指導してもらうと、やる気が出て成績も上がる」という教育専門家による調査の結果を読んだ。

 彼女自身は黒人であるが、校長先生は白人だ。ティルマン先生はダメもとで校長先生に次のように提案をする。

 毎日、ホームルームの時間の6分と、月に2回、各20分間だけ黒人生徒を集める。生徒たちは男女のクラスに分け、彼らの模範となるような黒人の特別教官による指導プログラムを作る。黒人男性または黒人女性に特有の悩みを指導員と話し合い、将来への希望を持たせる。そして学業に集中し、成績を上げられるような状況に、徐々に持っていく、というものだった。

 意外にも校長先生は、「(成績の人種格差という)事実から目をそらさず、この問題に立ち向かって解決する努力をしましょう」と快諾してくれた。これまで様々な試みがなされてきたが、どれも効果を得られなかったということが、その背景にあった。

 2010年12月から始められた、小さな町の小さな高校の試みは、黒人生徒たちに良い結果をもたらしつつあった。生徒たちは将来に希望を見出し、勉強に真面目に取り組むようになった。