その見通しの背景としては、米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領が、先の国連安保理会合で、中国が11月の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことに現れていると指摘している。
対中関税措置のほかにも、米国は中国に対し、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定した。
また、バラク・オバマ政権下で延期されていた台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も承認した。
さらに、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府は検討している。
前述のとおり、米国の中国向け「圧力戦略」は、NSS2017の対中脅威認識を背景に一貫した展開を見せている。
そして、「中国は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」「中国は、政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」とし、中国は、ロシアがクリミア半島併合で仕掛けた「ハイブリッド戦」と同じ「Gray War(灰色戦争)」を、米国に仕かけていると見ているのである。
以上の文脈からすると、トランプ政権は、長期的・戦略視点に立って、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうとする全方面対決を決意していると言えるのではないだろうか。
日米豪印の「4本柱」による安全保障協力体制
安倍晋三首相が、米ニューヨークで開かれた、先の国連総会での一般討論演説で、「北東アジアの戦後(冷戦)構造を取り除く」(カッコは筆者)と述べたことは、極めて重要である。
北東アジアでは、終戦から73年経った今日でも戦後は終わっておらず、また、戦後とほぼ同時に始まった冷戦も完全には終わっていない。
中国、ロシア、北朝鮮をめぐる外交・安全保障の問題がそれである。