2018年春、ベトナム資本のソフトウエア開発会社、A社が都内の小さなビルの一角に営業拠点を構えた。日本ではIT人材がますます不足している。A社は満を持して「ベトナムでのオフショア開発」の売り込みに着手した。
オフショア開発とは、ソフト開発の際にコスト削減を目的に新興国の技術者を活用することを指す。専門サイト「オフショア開発.com」を運営するリソーズ(東京都新宿区)によれば、「オフショア開発の新規発注先は、現在、8割をベトナムが占める」という。市場規模こそ中国が最大だが、ベトナムは二番手として確固たる地位を確立している。
日本ではモバイルアプリやゲームソフトの開発需要が高まっていることもあり、どの企業もソフト開発の委託先を探している。そこでA社は、得意の技術力をアピールして営業に奔走した。だが、どうも日本企業の反応が鈍い。
「日本企業は人手不足という割には、オフショア開発への関心は薄いようだ・・・」
A社を経営するベトナム人のX氏は微妙な変化を感じ取る。オフショア開発の代わりに訪問先の日本企業はX氏に対し、「ベトナムからプログラマーを派遣してくれないか」と持ちかけてくるのだという。