シャープは、債務超過から、台湾の鴻海精密工業の出資を仰ぎ、再建を推し進めている。鴻海グループ副総裁の戴氏がシャープ社長に2016年8月に就任した。

 そして、2017年度決算は4年ぶりの黒字になった。

 また、シャープは、東芝パソコン事業の買収を、2018年6月5日に発表した。(参照: 「シャープと東芝、何が運命を分けたのか 東芝パソコン事業を飲み込むシャープ復活の軌跡」

戴社長の人柄と鴻海流「日本型リーダーシップ」

「もう液晶の会社ではない。ブランドの会社になる」

 戴社長は、2018年6月20日のシャープ株主総会でこう宣言した。(参照: 「シャープOBが株主総会で見た鴻海流合理化精神 脱液晶を宣言したシャープ・鴻海連合の「光と影」

 株主総会で、取締役と監査役の報酬を上げることに反対する意見に対して、戴社長は毅然と述べた。

「私は、昨年の報酬はゼロです。利益が出れば報酬を得る。『有言実行』である。本当は、私ももらいたくない。でも、会社の運営を正常化しないといけない。次になる社長は、給料をもらいます。給料をもらうのは当たり前だからです。2020年3月に私が辞めても、次の社長が報酬をもらえるように、報酬を受け取ります」

 戴社長の人柄を一言でいえば、「清貧」である。

 日産のカルロス・ゴーン氏は、フランスのルノーから日産に乗り込み、まずはコストカットで日産を立て直した。海外から日本企業にきて、コストカットで立て直すという点では、戴社長と非常に似ている。しかし、大きく異なることがある。

 カルロス・ゴーンは、2017年の役員報酬として10億9800万円を得ている。

 これに対して、戴社長は0円である。まるで「メザシの土光さん」ではないか。

 また、ゴーン氏は、ルノーから30人のチームで日産に乗り込んだ。戴社長は、鴻海からシャープへただ1人で異動した。

 戴社長は、本社機能を堺工場内に移転する際に、創業者の早川徳次氏の銅像をも旧本社から移設し、出勤時に一礼するのを欠かさない(図1)。シャープ社員でもここまで創業者に敬意を払っている者はいまい。それほど早川徳次氏を尊敬し、経営信条を継承しようとしているのである。

【図1】 シャープ本社にある創業者・早川徳次の銅像と経営信条(筆者撮影)

 戴社長の「経費削減」は徹底している。

 株主総会は、堺工場にある本社見学者ホールで行い、株主総会の横断看板も演台の花もなく、簡素な造りである。従来の、旧大阪厚生年金会館を借りて行った従来の株主総会とは雲泥の差がある。

 極めつけは、日本での住まいだ。戴社長の住まいはシャープの社員寮だ。堺工場に新しい寮「誠意館」が建設されてからは、この社員寮に移った。新しい寮は個室に風呂・トイレが付いているが、以前住んでいた寮は風呂・トイレが共同だった。

 カルロス・ゴーン氏は「乗り込んできた外国人経営者」だ。その意味では戴社長も同じだが、ゴーン氏とは異なる「清貧」に徹する姿勢が、シャープの社員から信頼を寄せられる源泉となっている。