先進国の中で乳児死亡率がもっとも高い国は米国だ。生まれてから1カ月以内に乳児が死亡する確率は、日本の3倍。新生児集中治療室と専門家の数が、世界で最も充実している国であるにもかかわらずだ。

 その米国で、帝王切開で子供が生まれる率が史上最高となった。全体の32%、つまり3人に1人は帝王切開で出産していることになる。今や、全国の病院で行われる手術のトップは帝王切開となった。

 産婦人科の医師らによると、これは異常な数字だという。WHO(世界保健機関)は、米国の医療水準だと、全出産の15%ほどというのが妥当だという。

 なぜ米国では毎年帝王切開の率が高くなっているのであろうか。

自然分娩を知らない国民

 ここ数年、女優や歌手などの著名人や、都市部、特にマンハッタンやロサンゼルスなどに住む女性はこぞって「セレブ出産(Designer Birth)」を選ぶのがステータスとなってきた。

 日にちを決め、その日に計画的に帝王切開で子供を産むことを指す。病院によっては、直後に腹を引っ込める整形手術をオプションとして設けている。帝王切開の傷跡は、後に整形手術によってほとんど分からないようにしてくれる。

 日にちが決められれば、仕事や遠路やってくる家族の日程がはっきり決められる上、産みの苦しみを避けることができる。