トランプ政権の国家安保戦略、非難受けた中ロが反発

米首都ワシントンで、自身の政権の国家安全保障戦略について演説するドナルド・トランプ大統領(2017年12月18日撮影)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB〔AFPBB News

トランプ政権初の「国家安全保障戦略」が
暗示する2018年以降の世界

 ドナルド・トランプ米大統領は、昨年12月18日、米国の戦略3文書の最上位に位置つけられ、同政権の安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」(NSS2017)を発表した。

 「予測不能」と言われるトランプ大統領が政権を握って約1年、その安全保障観・安全保障政策をまとまった形で公表したのは初めてであり、世界で最も大きな影響力を持つ米国の今後の動向や国際安全保障情勢を占ううえで、大いに注目に値しよう。

 第1期オバマ政権で作られた2010年の「国家安全保障戦略」(NSS2010)では、対中関係を「協力と監視」、対露関係を「協力」という言葉で表現した。

 続く第2期オバマ政権下の2015年「国家安全保障戦略」(NSS2015)では、その前年頃から米国内の対中脅威認識が高まりを見せていたが、依然として中国は「協力と注視」と表現されるにとどまった。

 他方、ロシアは「侵略」の烙印を押された。2014年2月、ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部への軍事介入を行ったことによるものであった。

 その間、核ミサイル開発を続ける北朝鮮とイランは、「懸念」ないしは「深刻な懸念」の対象となってきた。

 しかし今回のNSS2017では、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると定義した。

 近年、中露などと競合関係にある地域で米国が「力の空白」を作り上げたせいで、現状変更勢力に影響力拡大の機会を作ってしまったとの認識が背景にある。

 中国は、インド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると警戒感を露わにした。

 また、ロシアは強力な力を再び蓄積し、周辺に勢力圏を築こうとしていると述べるとともに、サイバー攻撃などの情報活動で世界の様々な国で内政に干渉していると指摘した。