銀行による不動産融資や個人向け融資(カードローン)が増加している。マイナス金利によって銀行の利ザヤは縮小する一方となっており、相対的に高い金利が取れる分野に資金が集中している。融資先の開拓に苦労している地方の金融機関ではその傾向が顕著だ。融資の増加そのものに問題があるわけではないが、他の融資が伸びない中、特定分野の融資が膨張することは将来の不良債権予備軍になりかねない。
銀行の利ザヤが急激に減少
量的緩和策は日銀が積極的に国債などの資産を購入することで市場にインフレ期待を醸成させ、実質金利を低下させるという政策である。経済理論上、実質金利が下がれば、銀行の融資が拡大して設備投資が増加し、これによって経済成長が実現するというメカニズムだ。
だが残念なことに、政府や日銀が想定したようなインフレ期待は発生せず、銀行融資はあまり伸びていない。2017年3月における銀行による総貸出残高は482兆円となっており、量的緩和策スタート直前の2013年3月との比較では、金額ベースで約53兆円、率にして約12%の増加にとどまっている。
一方、日銀による積極的な国債購入によって、日銀当座預金には350兆円もの資金が積み上がった。当座預金の増加がそのままマネーストックの拡大につながるわけではないが、300兆円以上の資金をつぎ込んで53兆円の融資拡大ということでは、やはり効果は小さかったとの結論にならざるを得ないだろう。
量的緩和策による低金利に加え、日銀がマイナス金利政策を導入したことによって銀行の利ザヤは急激に減少している。預金者に支払う金利と貸出金利の差(預貸金利回差)は三菱東京UFJ銀行が0.97%、三井住友銀行が1.1%、みずほ銀行が0.86%となっており、この数字は年々縮小している。すでに融資ビジネスとしての銀行の業態は限界に近い。