長時間労働が社会問題として表面化し、政府や企業で是正の動きが高まっているが、その実現のためには、法改正だけでなく、労働者および経営層の意識改革が必要であることが各種調査で明らかになっている。具体的な課題や意識改革のための施策について考察しよう。
日本商工会議所が調査、36協定見直し賛否われる結果に
日本商工会議所が2017年2月1日に公表した「時間外労働規制に関する意識調査」集計結果によると、36協定締結済の企業のうち、法定労働時間を超える労働に必要な特別条項の届出済企業は50.6%と半数を超える。
政府は働き方改革を掲げ、現状の長時間労働を是正する目的で36協定の見直しに着手しているが、日本商工会議所が2017年2月1日に公表した「時間外労働規制に関する意識調査」によると、見直しに賛成の企業は53.8%、反対は40.7%と意見が割れる結果となった。
「見直し賛成派」の多くはその方向性について、「一定の上限規制は必要だが、業種業態・企業規模等を考慮し、一律に規制するのではなく、柔軟な制度設計とすべき」というもの。これは見直し賛成派の74.4%を占める。
一方、見直しに反対する意見のうち30.8%を占めたのは、「特別条項だけが長時間労働の原因ではないため、改正は無意味である」とするものである。また、「今後深刻化する人手不足を考慮すると、特別条項を活用せざるを得ない」という意見も12.9%あり、36協定見直しに賛成・反対を問わず、時間外労働はある程度しかたがないという考えが、日本の労働環境に根強くあることがわかる。
帰りにくい、長く働く美徳・・・日本企業の風土に潜む問題点
HR総研の「働き方改革」取り組み状況に関する調査結果でも、意識改革の重要性を垣間見ることができる。同調査では250社以上の企業に「労働時間」に関する実態や対策、課題についてアンケートを実施した。
1カ月の「所定労働時間」で最も多かったのは「151~160時間」(35%)、「平均実労働時間」では「171~180時間」(24%)であった。労働時間短縮に向けては、約7割の企業がノー残業デーの設定や残業の許可制をはじめとした何らかの取り組みを行っているというが、取り組みがうまくいっていると回答している企業は3分の1程度に過ぎず、約半数の企業がどちらともいえない状況と回答している。