「ロシアはどこを目指すべきか」──。激動の歴史を持つロシアにとって、これは答えるのが非常に難しい問題である。
今年10月末に、ある人物が、メドベージェフ大統領の「近代化」路線へのアンチテーゼとして「法と誠意・文明的保守主義」というマニフェストを発表した。
マニフェストを作成したのは映画監督、脚本家のニキータ・ミハルコフ(1945~)。「太陽に灼かれて」(1994)「シベリアの理髪師」(1988)といった映画で日本でも知られている監督である。
11月20日にポルトガルの首都、リスボンでロシア・NATOサミットが終了したが、ロシア内には、欧米と接近しようとするメドベージェフ大統領の路線を警戒し、反対する勢力も少なくない。
ミハルコフ監督はプーチン首相の支援を受けており、プーチンのリーダーシップを大いに称えている人物として有名である。そのため、ミハルコフが作ったマニフェストの背景には、「二頭政権」の分裂があるのではないかという憶測もあった。
ロシアは独自の道を歩むべきか、西洋の一員になるべきか
19世紀のロシアには2つの流れがあった。西洋化の流れと、ロシアの独特のアイデンティティーを維持しようとするスラブ主義・土着主義の流れである。現在、奇しくもこの2つの流れが復活し、どちらの道を歩むべきかという議論が活発になっている。
どうして、今になって復活しているのか。それは、両方を否定していた社会主義が破綻したことが大きな原因であることは間違いない。社会主義がなくなった空白を埋めるために、「ロシアはどこを目指すべきか」という議論が沸き起こっている。