近年、政府与党内や一部の野党も含めた永田町界隈で「敵基地攻撃能力」を保有するべきとの意見が盛り上がっている。
稲田防衛大臣は3月9日の衆院安全保障委員会で、敵地攻撃能力の保有を示唆した。また、3月8日のロイター通信は「(敵基地攻撃能力保有について)自民党は、抑止力が高まるとして今年夏前までに政府への提言を再びまとめる考えだ」と報じている。
背景にあるのは、ミサイル攻撃力を顕著に高めている北朝鮮の存在である。そして東シナ海で日本を威嚇し、日本を射程圏内に収める弾道ミサイルを大量に配備している中国の脅威もある。「敵基地攻撃能力」の保有を唱える人々はそうした背景を踏まえ、(1)抑止力が向上する、(2)MD(Missile Defense:ミサイル防衛)を配備するよりもコストが安くつく、としている。
しかし実際には、“現時点での”敵基地攻撃能力は、抑止力を向上させることはないし、コストは安いものではない。
以下では、敵基地攻撃能力の構築には意味がない4つの大きな理由を見てみよう。