小池知事が考えるべきなのは、豊洲の維持費とその機会費用の比較だ(資料写真、2016年9月撮影)

 東京都の豊洲新市場の問題が、混迷を続けている。1月14日に開かれた専門家会議では、都が実施した地下水モニタリング調査の結果、最大で環境基準の79倍のベンゼンが検出され、シアンが数十カ所で検出された。

 しかしこの「環境基準」は飲料水の基準であり、地下水を飲まない豊洲市場では何の問題もない。もともと去年11月に築地から移転する予定だったのを小池百合子知事が「都民の不安」を理由に延期したが、出てきたのは風評被害だけだった。

豊洲への投資はすでにサンクコストになっている

 これを受けて、小池知事は「豊洲には既に6000億円つぎ込んでいるがどうするのか」という毎日新聞の質問に「豊洲という場所に決めたことには私自身、もともと疑義がある。サンクコストにならないためにどうすべきか客観的、現実的に考えていくべきだ」と答えた。

 これが「豊洲への移転をやめると6000億円の投資が無駄になる」という意味だとすると、彼女はサンクコスト(埋没費用)の意味を取り違えている。サンクコストとは投資が終わって回収できない費用のことであり、6000億円はすでにサンクコストである。だから、「サンクコストにならないためにどうすべきか」という問題はありえない。

 だがこういう錯覚は多く、意思決定を混乱させる原因だ。問題を2つのタイプにわけて考えよう。

A. パチンコで1万円負けた。このままでは損が回収できないので、あと1万円つぎ込むべきか?

B. 干拓地に100億円投資したが、完成したときは農家がほとんどいなくなった。この干拓地は使うべきか?