韓国の経済界で繰り広げられていた韓流ドラマばりの買収合戦が、11月16日に決着した。そこには、役者も怨念の背景も揃っていた。
義理の兄妹が繰り広げた骨肉の争い
買収される側の企業は、韓国最大のゼネコンでありながら経営不振から金融機関の管理下になっていた現代建設。
ドラマの主役を演じたのは、玄貞恩(ヒョン・ジョンウン)現代グループ会長(55)と鄭夢九(チョン・モング)現代自動車グループ会長(72)。この2人が現代建設を巡りどろどろの買収合戦を繰り広げた。
総監督は、かつて現代建設のCEO(最高経営責任者)を務め、今や韓国大統領として韓国経済の発展に多大な貢献をした李明博(イ・ミョンバク)大統領(68)。彼が事実上、現代建設払い下げを決めた。
玄会長は鄭会長の弟の未亡人であり、必ず夫の無念を晴らすという怨念は凄まじかった。今回の買収劇は、義理の兄妹間のいわば骨肉の争いだったのだ。
その買収合戦は、資金力に勝る現代自動車グループが当初は圧倒的に有利と見られていた。
現代自動車が一敗地
ところがふたを開けてみると、「何が何でも現代建設を取り返し、夫の夢だった現代グループ再興を果たす」という一念に駆られた玄会長率いる現代グループが、5兆5000億ウォン(約4200億円)という巨額の買収額を提示、現代自動車グループを振り切り逆転勝利した。
今回の買収合戦は、韓国の大企業のダイナミズム、強さと、もろさや構造的な問題が交じり合った、どこまでも韓国的な争いだった。
「現代建設を巡って、現代グループと現代自動車グループが争う」と聞いても、何の話なのかすぐに理解できる方は相当の韓国経済通だろう。買収される企業にも、買収を目指した企業グループにも「現代」という名前がついているからだ。
この点こそ、今回の買収合戦が「怨念の戦い」と言われるゆえんである。実はつい10年前まで、韓国最大の財閥と言えば、サムスンではなく現代だった。