2つ目の要因は、日本におけるトレジャリー・マネジメント・システム(TMS)の普及が遅れていたことが挙げられます。

 欧米には昔からTMSのシステムベンダーが存在します。そのため、企業はトレジャリー・マネジメントを高度化させるためのTMSを導入することができました。一方、日本では、これまでグローバルに利用できるTMSベンダーが少なく、導入コストも高かったことから、トレジャリー・マネジメントがなかなか進みませんでした。

 ただし最近は、日本でもTMSを販売するベンダーが増えてきました。さらにはクラウド化が進み、コストも低下したことから、ようやくTMS導入によるトレジャリー・マネジメントの高度化を推進できる環境が整ってきたといえそうです。

 ほかにも要因として、「情報の格差」や「ものづくり優先の経営姿勢」などが挙げられます。欧米企業のトレジャラー(資金管理部門のトップ)はトレジャリー専門の英語のウェブサイトから先進的な事例情報や各国情報を入手し、トレジャリー業務の高度化に活用しています。一方、日本企業の財務部・資金部はそうしたサイトの存在を知らないか、知っていても英語であるため、理解のハードルが高いという事情もあります。