「JBpress ビジネスカレッジ」がお送りする連載企画「トレジャリー・マネジメント」の第4回(最終回)は、日本企業においてトレジャリー・マネジメントが進展しない要因、経営者や財務部門がトレジャリー・マネジメントに取り組まなければならない理由について、PwCあらた有限責任監査法人財務報告アドバイザリー部パートナーの福永健司氏が解説します。
トレジャリー・マネジメントの進展を阻害する4つの要因
日本企業では、なぜトレジャリー・マネジメントがあまり進展しないのでしょうか?その要因はいくつか考えられます。
1つは、メガバンクの海外での「トレジャリー業務サポート力」が強力とは言えない状況にあることです。外資系大手金融機関と日本のメガバンクのそれを比較すると、まだまだ格差があるのが現状です。
財務報告アドバイザリー部 パートナー
福永 健司 氏 PwCあらた有限責任監査法人において事業会社向けコーポレート・トレジャリー、および銀行向けトランザクション・バンキングのアドバイザリー業務のリー ダーを務める。メガバンク(約17年)、ITベンダー(約2年)を経て現在に至る。トレジャリーおよびキャッシュ・マネジメント、トレジャリー・マネジメ ント・システム、インターネットバンキング、B2B/B2Cコマース、国際決済システム、FinTech、BPR、商業銀行の勘定系システム・海外事務、 商業銀行会計および信託銀行会計、リスク&コンプライアンス、金融当局対応等の分野で27年以上の経験を持つ。
実は、日本国内においては、日本企業のトレジャリー・マネジメントはかなり先進的なレベルにあります。資金管理規定を策定し、金融子会社を通じてグループ資金の見える化とキャッシュプーリングを実施していたり、ホスト接続方式による大量送金の伝送、ネッティングや支払代行、売掛金消込の自動化、売掛債権の流動化などをすでに実施しているなど、“円の世界”だけを見ると、トレジャリー・ソリューションという意味では欧米企業よりも先行しているといっても過言ではありません。
ところが、「海外で、外貨」となると状況は一変します。最も大きな格差は、サービスの地域カバレッジです。日本のメガバンクは欧米の大手金融機関ほど多くの国でサービスを提供できていません。したがって、日本企業が海外で日本と同様のサービスを享受しようとすると、外資系大手金融機関に頼らざるを得ない状況にあるのです。